【西武投手王国への道】一軍初先発を遂げた3年目左腕 21歳が飛躍するための必要な要素「調子の良し悪しに左右されると、結局一軍では通用しないと思います」(榎田大樹コーチ)
一軍登板で何を得て今後につなげていくか
菅井は独特な腕の振りから投じる最速149キロの速球を持ち味としている。相手打者にそうイメージされているなか、課題の変化球をどう操っていくか。そうした意味で悪い結果につながったのが7月7日、ロッテ戦(ベルーナ)だった。 2対4で迎えた6回、先頭打者のグレゴリー・ポランコにはストレート、カーブが続けて外れたあとのストレートを右中間にホームラン。続く荻野貴司には初球のストレートが外れ、2球続けた速球が真ん中に甘く入ってレフトスタンドに運ばれた。 「(捕手の)牧野(牧野翔矢)さんに変化球のサインを出されて首を振って投げた結果です。その前にポランコにカウントを悪くして打たれたので、荻野さんにはカウントを悪くするのが嫌で真っすぐを打たれました」 曲がり球の精度という課題の中でカウントを不利にした結果、持ち味のストレートを2者連続でスタンドに運ばれた。二軍なら力で上回れたり、相手の打ち損じもあったりするが、一軍の打者は失投を見逃してくれない。その壁をどう乗り越えるかが、菅井も含めた若手投手にとって一軍定着のカギになる。 「高卒3年目なので、まずはある程度自分のピッチングをするという形でやっていけばいいと思います」 榎田コーチはそう前置きした上で飛躍に必要な要素を挙げた。 「実戦で課題が見えたら『どうすれば一軍で活躍できるか』とつぶしていく。例えば一軍で結果を出せずに二軍に行ったとき、普通に投げるだけでなく制約を設けてみる。ヤクルトに移籍した宮川哲はカーブを多めに使ったり、隅田(隅田知一郎)は変化球を使わずに抑えたりしていました。漠然と投げて結果が出ても、なぜ一軍で打たれて二軍で良くなったかが分かりません。調子の良し悪しに左右されると、結局一軍では通用しないと思います」 二軍のころと同様、現状の菅井は調子の波が大きい。2者連続本塁打を打たれた2日前、7月5日のロッテ戦(ベルーナ)は1イニングを三者凡退で抑えたように、高いポテンシャルを備えているのは間違いない。 さらに首脳陣が期待をかけるのは、それだけの内面を備えているからでもある。榎田コーチが続ける。 「思考力に加え、自分が『こうしたい』ということを続けられる選手です。内海さんに教わったことを今年も一生懸命続けている結果、支配下になれたと思います」 年間100敗も危ぶまれる現在の西武では一人でも多く戦力が求められ、菅井は期待のかかる一人だ。 同時に、21歳の左腕は未来へのステップを踏んでいる段階でもある。一軍で投げる以上、結果を求められるのは当然だが、その中で何を得て今後につなげていけるか。 本格派と期待される左腕は、自分の見据える道を一歩ずつ進んでいく。
週刊ベースボール