これぞ“川手マジック”。野菜の新たな味わいを引き出す新生「フロリレージュ」にフードライターも熱視線
ナイフを入れるや、サクサクのパイ皮の中からペースト状の大根が顔を覗かせる。そのややとろみを含んだ軟らかさと揚げパイのサックリした食感のコントラストが実に美味。どこか大根餅を思わせるテイストに合わせたのは、煎り酒のソースとクレソンのオイル。
パイの上にのせたのはキャビアと思いきや、実はトンブリ。ことさらに高級食材や珍しい食材を追い求めるのではなく、大根や白菜といった日常的に手に入るおなじみの食材を使って「こんな食べ方、味わいもあったの!?」と思わせる逸品に仕上げる。そこに川手シェフが目指すオリジナリティがあるのだ。中華や和、時にはメキシカンとグローバルな視点を取り入れつつも、着地点はきちんとフランス料理に落ちつかせる川手シェフの手腕のほどはさすが。あくまでも自分はフレンチの料理人――という川手シェフの自負を感じずにはいられない。
主役となる食材は少なく仕上げも一見シンプルだが、一皿を構成する要素は複雑かつ緻密。見えない細緻な手間ひまと味へのアプローチが唯一無二の味わいを生み出している。ディナーのコースは全9~10品で22,000円。
※価格は税込、サービス料別
Florilege
住所: 東京都港区虎ノ門5-10-7 麻布台ヒルズ ガーデンプラザD 2F TEL: 03-6435-8018
撮影:大谷次郎 文:森脇慶子、食べログマガジン編集部