行きはクルマを運んで帰りは普通の荷物……なんてケースも! 多様化するいまどきのキャリアカー事情
高級車用のキャリアカーも存在
乗用車などクルマを運ぶトラックにキャリアカーがある。自動車メーカーの生産工場から港や一時保管されるモータープールに運び、そこから地域の納車前点検などを行うサービスセンターなどに運び、ディーラーまで運ぶ。この運ぶ作業を担うのがキャリアカーだ。 【写真】デコトラには欠かせない! 職人たちが手がける 「箱絵」ってなに? その荷台は鉄骨で組み上げられた枠組みのなかに、車体を支えるラダーを組み込み、それらを上下動させることで上下にクルマを積み込むことができるものが一般的。これによりひとりのドライバーが一度に複数台のクルマを運搬できるため、新車や中古車を一気に運ぶには最適なトラックとなっている。 最近は5台積みの中型キャリアカーよりも、さらにたくさん積めるトレーラーや大型キャリアカーが主流になりつつある。海外ではフルトレーラータイプのキャリアカーも多く、その積み下ろし作業の複雑ぶりは、見ていて飽きないほど面白い。 また、1台積みでベッド(荷台)自体が後傾するセーフティローダーは、1台しか運べないものの、事故車や不動車を運ぶこともできるし、高級車を1台ずつ用件に合わせて運ぶために利用されている。 さらに、高級車用のキャリアカーとしては、箱車タイプでクルマを飛び石や風雨などから守りながら運べるものもある。かつてホンダはバブル期にNSXを運ぶための専用のローダーを開発。その箱ボディは大きな窓が与えられて、特別な待遇であることをアピールしながら運ばれたものだ。 現在でも、高級車は1台積みの箱ボディで納車されることが多い。PDIセンター(輸入車など納車前整備の工場)やディーラーへ運ぶのは通常のキャリアカーであることもあるが、そもそも台数が少ない高級車は、まとまった台数になるまで待機させると作業効率が悪くなるので、1台ずつ運ぶことが多いのだ。 それでも最近はトラックドライバー不足もあって、超高級車でも複数台数を運ぶ状況もある。また、往復どちらの行程でも車両を運ぶ仕事が獲得できないケースを想定して、キャリアカー兼普通の箱車としても使えるトラックやトレーラーも登場している。 ちなみにレーシングチームがマシンやパーツ、工具類などをまとめて積載できるレーシングトレーラーを利用しているが、これもキャリアカーの一種といえるだろう。 最近は車体の大型化、重量の増加が進んでおり、キャリアカーの負担も増えている。それでいて総重量を考えると、トラック側は軽量化を図らなくてはいけないから、課題は多い。架装メーカーは、素材や形状、構造などを工夫して、今後もユニークなデザインのキャリアカーを作り出してくれるに違いない。 欧州の架装メーカーも独特なアイディアや堅牢な作りをみせるキャリアカーを生産しているが、日本製は高い信頼性により確実に業務を遂行できるのが大きな強みといえる。 新興国で使われるキャリアカーは、価格の安さから中国製も多く使われているが、乗用車同様、日本製の高い品質を武器に、日本の架装メーカーのキャリアカーが増えていってくれることを期待したい。
トラック魂編集部