【佐久間宣行×三宅香帆 特別対談】20万部超えベストセラーを生み出した二人の仕事術、共通点は?
どんなビジネスにも「ごきげん」と「ごほうび」が必要
佐久間 機嫌を悪くしない=「ごきげん」でいることでしょうか。『ごきげんになる技術』にも書きましたが、僕にとってはごきげんでいることは、ニコニコしてテンションを高く保つことではなくて、「メンタルが安定していてブレない軸があること」。 こういう自分が保てると、他人に嫌な印象を与えないから人間関係がスムーズになるし、実際に部下や上司からの信頼を勝ち取っている人も多い。自然と気持ちを向けられるのかな、と思います。 それを前提として、組織やチームをまとめる立場で言うと、大きな仕事の後にはウマい飯をごちそうするようにします。 年に一度、年末年始に放送される「ゴッドタン 芸人マジ歌選手権」は、準備から収録、編集、オンエアまで本当に過酷。収録が終わってから打ち上げをやろうとすると、ワクワクできる時間が数日しかないじゃないですか。 だから企画が動き出す初期の段階で行きたいお店や食べたいものの希望を募り、お目当ての店を予約しておきます。2ヶ月くらいは心の片隅にちょっとしたワクワクがあるので、何もないよりはうれしいかな、と。 三宅 なるほど(笑)。ゴールの先にある楽しみを共有しておくのですね。 佐久間 真面目な部分でいうと、おこがましいですが、僕から何かを吸収できることがある状態にしておくこともひとつ。そうじゃないと、僕と働く意味がないだろうし、モチベーションも続かないと思うので。 三宅 それは自発的に学んでもらうのか、仕事術を具体的に教示するのか、どちらのイメージなのでしょう? 佐久間 30代前半くらいは、「実際にやって見せればわかってもらえるだろう」と詳しく説明しなかったんです。 でも30代後半以降、人を統括するポジションに就いてからは、プロジェクトの狙いはもちろん、決定に至るまでのプロセスまで、全員と共有するようになりました。 そうすると僕がいない場面でも再現性が高まる。価値観までを共有すると、たとえ失敗しても全員の経験値になり、今後の糧にもなります。結果、人が育つし、それぞれが頭角を表すようになりましたね。 三宅 佐久間さんは、まだ世の中に出ていない若手の方や、テレビに呼ばれづらくなった芸人さんなど、キャスティングの面でもニッチな起用をされていますよね。 佐久間 過去に不祥事や過ちを起こしたタレントさんとも仕事をしています。世の中でうまくやっている人より、むしろうまくやれなかった人のほうが多いだろうし、たまたま僕はまだやらかしてないだけで将来問題を起こす可能性だってゼロじゃない。 社会のシステムから外れることは何も特別じゃないという気持ちが根底にあるから、どん底を経験した人にもセカンドチャンスや敗者復活の舞台を用意したい。芸人さんだったら、絶好のタイミングで笑いに変えたいんですよね。 三宅 私もさまざまなミスや失敗をしてきて「よく許してもらえたな」と思うので、佐久間さんのような方がいることが、現代の救いだなあと本気で思います。 これからも自分に何が起こるかわからないので、できるだけごきげんで元気でいよう、と今日決意しました。 メディアの世界で、他人に対して高圧的になることがパフォーマンスになる時代もあったかもしれないけれど、現代はそういう時代から明らかに変わってきていますよね。ごきげんであることが、仕事術のひとつなんだなと心から思います。 完 取材・文/広沢幸乃 ※「よみタイ」2024年12月28日配信記事
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