【佐久間宣行×三宅香帆 特別対談】20万部超えベストセラーを生み出した二人の仕事術、共通点は?
発売初週で累計10万部を超えるスマッシュヒットを飛ばし現在20万部突破、さらに「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」を受賞した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)の著者である三宅香帆さん。じつは『ごきげんになる技術 キャリアも人間関係も好転する、ブレないメンタルの整え方』(集英社)を上梓した、ニッポンのエンタメ界を牽引する佐久間宣行さんが手がける作品のファンという経緯から、対談が実現。前半はお互いの著書の感想や、働きながら自分のごきげんをいかに保つか、「本」というメディアのメリットなどについて語っていただきました。後半は、仕事の原動力、そして自分がやりたい仕事で結果を出すために考えていることなどをトーク! 【画像】番組名でエゴサするという佐久間宣行氏
キャリアを築くためには自分自身を知ることが大切
三宅香帆(以下、三宅) 私の仕事の原動力は、好きな作品の醍醐味を伝えたり、適切な批評をしたりすることで、自分が良いと思う作品が広がってほしい、という思いです。結果、世の中がいい方向にいけばいいな、と。 それを理想としながらも、現実的には他者から見たとき、自分のキャラクターや方向性がもっとわかりやすい方がいいのでは?と悩むこともあります。 佐久間さんがつくるものは、どの作品でもさりげなく“佐久間宣行印”がついていますよね。それが本当にすごいです。 佐久間宣行(以下、佐久間) 僕の場合、早い段階で自分が持つ武器(才能)や趣味嗜好がメインストリームじゃないことに気づいて。 オードリーの若林くんの言葉を借りると、ボンネットを開けてエンジンの搭載量やクセみたいなものをつかんだからこそ、自分という車の乗りこなし方がわかったというか。 野球で言えば、ストレートに投げたつもりがシュート回転しちゃうから、それを踏まえてストライクゾーンにどう投げるか、みたいな。 自分のクセをコントロールせずにボールばかり投げてたら、この先、食べていけないなという感覚は、ずっとあったんです。 三宅 それに気づいたのは、いつ頃でしたか? 佐久間 30代前半ですね。テレビ東京に入社して2年目で企画が採用された「ナミダメ」も、「ゴッドタン」の前身「大人のコンソメ」も、新人賞を受賞したり一部の評価は高かったけれど、番組自体は半年で終了してしまって。 濃くてコアな作品だけに特化してもキャリアは続かないことがわかった。だからまずは社内で社会人としての信用を確立すること、そして自分のキャラクターや能力を知ること、あとは作品の届け方を考えました。 三宅 そこに劇団ひとりさんや東京03さん、バナナマンさんなど、まだ無名だった関東の芸人さんをキャスティングすることも、佐久間さん自身の旗印になった、ということでしょうか。 佐久間 それもありましたね。当時のテレビ東京にはお笑い番組がなかったんですよ。 後期参入という立場だったので、料理人で譬(たと)えるなら待っているだけでは上質な牛肉や新鮮な野菜はまわってこない環境。だから自らの足で生産者を探しに行くしかなかったというか(笑)。