日本人がん患者の遺伝子変異の全体像判明 国立がん研が初の5万人ゲノム異常解析
遺伝子差別につながらないことが必須
患者の遺伝子を調べるさまざまな研究はがん治療の進歩を支えている。研究が進んでいる背景にはがんの種類ごとに遺伝子変異が分かってきたことが挙げられる。ただ、その一方で、個人で異なる遺伝子、遺伝情報は「究極のプライバシー」だ。その保護と差別防止はがんゲノム医療を進める上での大前提だ。保険加入や就職などの場面で遺伝情報の不適切な取り扱いがあってはならない。 ゲノム医療を適切、公平公正に進めるための「ゲノム医療推進法」が2023年6月に第211回通常国会で成立している。遺伝情報による不当な差別をしないことなどを明記しているが、新法は原則を示し、「総論」的なため、新法の理念に合った研究、医療体制を整備するために具体的な施策が求められる。 がんに限らず同じ病気でも原因と関係する遺伝子の変異は患者によって異なる。どの遺伝子のどの部分に原因があるか分かれば、患者に合った、体力的負担や費用、高価な薬使用の面などで無駄のない効果的な治療法が見つかる可能性があり、期待は大きい。それだけにゲノム医療の推進と遺伝情報保護と差別防止は車の両輪と言える。 (内城喜貴 / 科学ジャーナリスト)