数億の税金を溶かした悲惨な過去! 南アルプスIC近くオープン「コストコ」は本当に成功するのか
かつて存在した「観光型農場」の末路
かつて、ここには「南アルプス完熟農園」という施設が存在していた。開業は2015年6月で、南アルプス市の前市長、中込博文氏が推進したプロジェクトだ。いわゆる 「観光型農場」 で、果樹園や野菜畑、バイキングレストラン、物産販売所が一体となった施設だった。 南アルプス完熟農園を運営する株主会社、南アルプスプロデュースは南アルプス市が出資した企業であり、市はこの農園の整備に8億円もの費用を投入している。つまり、南アルプス完熟農園は実質的に市営の施設だったのだ。 このように大きな期待がかけられていたにもかかわらず、南アルプス完熟農園は開業からわずか7か月後の2016年1月に閉園してしまった。閉園の理由はさまざまで、 ・準備不足 ・物産販売所のオリジナル商品の不足 ・天候不順による商品供給の困難 などが挙げられる。しかし、特に注目すべきは、南アルプス完熟農園の開業直前に発生した 「政変」 だ。2015年4月の南アルプス市長選挙で、当時の現職中込氏が新人の金丸一元氏に破れたことが影響したのだ。
市を揺るがした破産申請
南アルプス完熟農園に対する商業施設としての評価は、今も賛否がわかれている。集客については、当初の予想以上だったという分析もあり、農園の経常赤字も市が発表したほどの多額ではなかったという意見もある。 しかし、金丸氏が非常に早い段階で農園に見切りを付け、運営会社の破産申請を甲府地裁に申し立てたという事実はひとつのポイントだ。この決断により、それまで農園にかけていた億単位の費用が無駄になってしまった。もちろん、その資金は市税から捻出されたものである。 金丸氏のこの判断については、南アルプスプロデュースと農園に商品を供給していた生産者協議会の関係者から監査請求が出されている。請求の要旨は次のとおりだ。 1 請求の要旨 (1) 金丸一元市長が、平成28年1月29日付で株式会社南アルプスプロデュースに対し、独自の判断で破産法に基づく債権者申し立てによる破産手続きを申請し、同年2月4日付で破産手続きが開始され南アルプス市に多大な損害を与えたと判断されるため、その損害額を請求するもの。 (南アルプス市監査委員告示第3号) この監査請求は 「いずれも違法、不当な行為又は怠る事実にあたるとは認められず」 という理由で棄却されたが、南アルプス完熟農園を巡る現職市長と前市長の対立はその後も続いている。このような背景を知ると、コストコ南アルプス倉庫店に寄せられる 「期待と不安」 がより明確に見えてくるだろう。