ノーベル医学生理学賞の本庶氏会見(全文1)「私は幸運な人間」
1日、2018年のノーベル医学生理学賞が、京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授に授与されることが発表された。米テキサス大学のジェームズ・アリソン教授との共同受賞。日本人研究者の同賞受賞は、東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏以来、2年ぶりとなる。 本庶氏は、免疫を抑える働きを持つたんぱく質「PD-1」を発見。この研究が、がん免疫療法の進展につながった。同日夜の記者会見で、本庶氏は「自分の研究が本当に意味があったということを実感し、何よりもうれしく思う。その上このような賞をいただき、私は幸運な人間」などと喜びを語った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードはYouTubeのTHE PAGEチャンネル上の「ノーベル医学生理学賞 京大の本庶氏が受賞会見(2018年10月1日)」に対応しております。
京大・山極壽一総長のあいさつ
司会:それでは定刻になりましたので、記者会見を始めさせていただきます。ただ今より、本庶佑特別教授のノーベル生理学医学賞受賞にかかる記者会見を行います。まず最初に本日の出席者の紹介をさせていただきます。向かって左側となります、このたびノーベル生理学医学賞を受賞されました本庶佑特別教授です。向かって右から左目、京都大学、山極壽一総長です。一番右側、湊長博理事・副学長です。一番左側、稲葉カヨ理事・副学長です。それでは山極総長から今回のノーベル賞受賞についての感想を含め、ごあいさつ申し上げます。 山極:本学高等研究院副院長、本庶佑特別教授のノーベル生理学医学賞受賞の一報に接し、まず本庶特別教授に心よりお喜びを申し上げます。このたびの受賞の決定は本庶特別教授をはじめ、これまで本庶特別教授と共に研究を進めてこられた多くの方々の熱意と努力のたまものであり、そのご尽力と成果を大いにたたえたいと思います。また、今日まで京都大学における基礎研究の推進に多大なるご支援を賜りました日本政府、総合科学技術・イノベーション会議、文部科学省、厚生労働省、内閣府、科学技術振興機構、日本学術振興会、日本学術会議をはじめとする関係諸機関、および関係各位に厚く御礼を申し上げます。 このたび受賞の対象となりました本庶特別教授の研究成果は、新しい免疫の仕組みの解明に基づいて、画期的ながんの治療法の開発をもたらしたものであり、このがん免疫療法はすでに世界中のがんに苦しむ多くの人たちに適応されていて、大きな光明をもたらしております。本庶特別教授がこれまで長年にわたって免疫学の重要な問題、特に抗体の多様性形成のための遺伝子組み換えのメカニズムについて非常に大きな研究業績を上げられてきたことは、すでに皆さま、ご存じのとおりでございます。 これに加えて本庶特別教授はPD-1受容体を発見され、この分子が免疫反応のブレーキとして極めて重要な役割を果たしていることを明らかにされました。さらに、このPD-1受容体が、がんに対する免疫応答にも、ブレーキとして働いており、この機能を抑制することによってがん免疫応答を強く促進し、その結果としてがんの増殖や転移を抑えることができるという、まったく新しいがん治療の理論を提示されました。このPD-1阻害によるがん免疫療法の理論は、その後、実際の人の臨床試験によって実証され、現在では最も効果的ながん治療法の1つとして世界中で広く用いられるに至っております。これは医学の基礎研究が実際の臨床応用に結びついて、人類の健康維持に大きな貢献をもたらした代表的なものと言えるでしょう。 本庶特別教授は、これまでの免疫学研究の大きな業績によって、1982年に朝日賞、1996年に日本学士院賞・恩賜賞、2012年にロベルト・コッホ賞、2013年に文化勲章、2014年に唐奨、2016年に京都賞など数多くの受賞をされております。 今回の受賞は基礎研究を重視する本学の医学分野の研究者にとどまらず、日本中の若手研究者を大いに鼓舞するものでございます。今後もノーベル賞級の独創的な先駆的研究成果がわが国から続々と生まれますように、今回の本庶特別教授の栄誉をばねにして、本学としてよりいっそうの研究環境の整備を行うとともに、世界トップレベルの人材の育成に努めてまいりたいと存じます。関係各位におかれましても、いっそうのご支援とご協力を賜りますよう、切にお願い申し上げます。私の発表は以上でございます。ありがとうございました。 司会:続きまして本庶佑特別教授から、ノーベル賞の受賞報告および感想等につきましてお話しいただきます。本庶先生、よろしくお願いいたします。