労働力が足りない…「外国人に選んでもらえる国に」ついに政府、経済界が取り組み始動
■経団連が「外国人政策委員会」設置
5月末。経団連は外国人政策委員会を立ち上げた。外国人の受け入れ環境の整備など、課題について議論を進めるとしている。会長十倉雅和氏が好んで引用する言葉の一つに「労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」というものがある。スイスの作家の言葉だ。 要するに、人手不足で海外から働き手を呼ぶときに、呼ぶ方は「労働力」という頭しかない。しかし、実際に来るのは当然ながら「労働力」ではなく「人間」で、すなわち家族もいれば、働くだけではなく、生活をする。異国で暮らすということはさまざまな困りごとも出てくるし、子どもの学校や友だち、言語の問題、生活習慣やルールの違い、医療へのスムーズなアクセス、とさまざまな対応が必要となる。 十倉氏は外国人政策委員会設置の意図をこのように説明した。「『ここの分野のこの人が足らないからこの人を採りたい』と、そういう自分に都合のいい考え方では見透かされてしまうと思います。それでなくても円安で、給与水準でみれば(他国に比べて)そんなに高くないわけですから、『日本を選んでもらう』という、そういう環境づくり、そういうのを一番重点に置かれる(べき)と思います」。 一方、政府も姿勢を変えている。6月21日、政府は外国人との共生社会の実現に向け、今年度中に実施する総合的対応策を決定した。日本語教育の取り組みや外国人向けの相談体制の強化などが盛り込まれた。林芳正官房長官は閣僚らに向けて、「日本が魅力ある働き先として、外国人材から選ばれる国となるための環境整備」に取り組むよう指示した。 政府も経済界も危機感を募らせる労働力不足。もはや都合よく、労働力だけ増やすことなどできはしない。少しでも多くの先行事例を検証し、迎える側にとっても、来てくれる側の外国人にとっても、できるだけ負担が少なく、ともに暮らしやすい対策をとることが求められる。