労働力が足りない…「外国人に選んでもらえる国に」ついに政府、経済界が取り組み始動
農家からも心配する声が聞こえてきた。「JASMの第二工場が建つと、地下水が足りなくなるんじゃないかってみんな心配しているね」(農業に従事する男性)。 「水どころ」として知られる熊本。熊本市のサイトには「市民の水道水の100%を地下水で賄っている」「まさに世界に誇る地下水都市」との文字が躍る。 しかし近年、水位の低下などがみられ、市はさまざまな対策を打っている。その一つが、「水田を活用した地下水のかん養」と呼ばれるものだ。田んぼに雨水をため、地下に大量の水をしみこませる。水を張る期間と面積に応じて補助金が支払われる。 こうした取り組みが行われる中で、地下水を大量に使う半導体メーカーであるJASM、そして周囲に新たな工場が増えていくことは、地元の人たちに「水の不安」を与えている。
■外国人にとって暮らしやすいか
一方で、日本にやってきた外国人の生活はどうだろうか? JASMの周りにはSONY、東京エレクトロン、日本ピラーなどの巨大工場が立ち並ぶ。 そのうちの一つで働く台湾の若者に話を聞くと、「食事が困る」と話す。その男性は台湾から3か月の出張で来ていて、今後、日本の工場でつくっている部品を、台湾の工場でつくっている部品と組み合わせるため、その作業を習得するために来日している。 提供されている住まいは、熊本市内のビジネスホテル。工場からバス、電車、市電と乗り継ぎ、片道1時間ほどかけて通勤している。日本語を話すことはできるが、「外食、特に焼き肉はダメ」という。何かというと、漢字は読めてもカタカナが読めない。レストランのメニューにカタカナが多いことに「お手上げ」だという。 「一気に台湾から移住者が増えて、マンションの建設ラッシュ」「外国人が本当に増えた」。そう聞いていたため、「熊本市内の駅や町の看板や案内には英語、中国語などが併記され、外国人に住みやすい町になっているのでは?」と期待を抱いていたが、そうした目に見える変化はまだまだだ。 駅前の家電量販店の店内には、「外国人対応」を思わせる多言語の案内はない。しかし、外国人客は多いという。 どう対応しているのか聞くと「これがあるので問題ないです」という。指し示す先を見ると、売り物だと思っていたディスプレーは小型のスマホサイズの通訳機で、店内のあちこちに置かれていた。お互い母国語で話しても、画面上に相手の言語に翻訳された文が表示されるので、日本語がわからない外国人を相手にしても、問題なく接客できるという。