【シリア問題の基礎を学ぶ】この国が世界を揺るがす理由…ロシア、イラン、イスラエル、米国、トルコはどう関与
■ 国民の約6割が難民、今後の帰還が焦点に シリアの今後はどうなるのでしょうか。 暫定政権は来年3月までの政権移行期間中に民主的憲法を制定し、選挙を実施するとの意向を示しています。しかし、反政府勢力は民族や宗派の異なるグループの集まり。安定した政治基盤を構築できるかどうか予断を許しません。 シリアでは、国民約2200万人の約6割が難民となって国内外に逃れているとされます。これらの人々が無事に帰還し、平穏な市民生活を取り戻すことができるかどうかも焦点です。 それに加え、政変後はアサド政権による残虐な国民弾圧の実相も明らかになりつつあります。アサド政権時代、反体制派は政治犯として収容され、激しい拷問や虐待を受け続けました。収容所の全体像は明らかになっていませんが、10歳未満の子どもも囚われの身だったとされています。 ロシアやイランなど支援を受けてきた国々とも、新たな関係を結ばなくてはなりません。国際社会の支援も欠かせないでしょう。 半世紀に及ぶ独裁と苛烈を極めた内戦に終止符を打ち、どのようにして国を再建するのか。シリア問題は中東全体、さらには国際社会全体に大きな影響を与えるため、遠く離れた日本も無関心ではいられません。 西村 卓也(にしむら・たくや) フリーランス記者。札幌市出身。早稲田大学卒業後、北海道新聞社へ。首相官邸キャップ、米ワシントン支局長、論説主幹などを歴任し、2023年からフリー。日本外国特派員協会会員。ワシントンの日本関連リサーチセンター“Asia Policy Point”シニアフェロー。「日本のいま」を世界に紹介するニュース&コメンタリー「J Update」(英文)を更新中。 フロントラインプレス 「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo! ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。
西村 卓也/フロントラインプレス