なぜ歯をなくした?口ばしが進化した現在のトリ 垣間見える恐竜たちの姿
まず(1)の化石記録において、中生代のトリの化石には、実は歯を持っていたものがいくつか知られている。例えば最古の鳥類の一つとして知られる東ドイツのArchaeopteryx(始祖鳥)には歯がきれいに生えている。白亜紀後期にもいくつかの種が歯を備えている。例えば海鳥Ichthyornisにおいてもはっきり確認できる(Image 4)。ちなみに写真の見事な化石標本は、私の友人Anthony Maltese氏が北米カンザス州で昨年の秋に発見したものだ(発見の模様などはを参照)。 こうした化石記録における事実は、「歯の退化はとりあえず鳥類において進んだ」可能性を指摘しているようだ。 しかしつい最近、ジュラ紀のケラトサウルス類(Ceratosauria)に分類される「リムサウルス(Limusaurus)」の歯の発生パターンにおける興味深い研究論文をみかけた。ケラトサウルス類は比較的原始的な獣脚類のグループに属する恐竜だが、比較的大型で、中生代の初期から中期(三畳紀後半―ジュラ紀後半)にたくさんの種が知られている。鳥類の直接の祖先からは、やや離れていると考えられている。(羽毛の存在は今のところケラトサウルス類において知られていない。) Wang等.(2017)によると、幼体のリムサウルスには、他の多くの中生代の獣脚恐竜のように、たくさんの歯が見られる。しかし(なんと)成体になると歯が喪失していることが確認された。成長プロセスにおける歯の喪失は、「雑食性から草食性への移行」を示していると、研究グループは結論づけている。非常に興味深いアイデアだ。こうした食生活の変化が、同じように初期の鳥類のアゴと歯の進化に影響を与えたのだろうか? Wang et al., 2017. Extreme ontogenetic changes in a ceratosaurian theropod. Current Biology 27: 144-148.