なぜ人間の赤ちゃんは大声で泣くのか…「母親が1年間ずっと抱っこするゴリラ」との決定的違い
■人間の赤ちゃんとゴリラの赤ちゃんの違い ゴリラからみると、人間はとても不思議な子どもの成長と子育ての特徴を持っている。ゴリラの赤ちゃんは平均体重1.6kgで生まれてくるが、人間の赤ちゃんは3kgを超える。ゴリラの赤ちゃんが3年間お乳を吸うのに対し、人間の赤ちゃんは1歳前後で離乳してしまう。 これらの特徴から人間の赤ちゃんは成長して生まれてくるのかと思えば、ゴリラよりずっと成長が遅い。しかも、ゴリラの赤ちゃんは離乳するときにすでに永久歯が生えているのに対し、人間の赤ちゃんは6歳になってやっと永久歯が生える。それまでの間、華奢な乳歯で硬いものが食べられない。 今でこそ人工的な柔らかい食物があったり、調理できるので離乳食には事欠かないが、農耕や牧畜が始まるまで親たちは特別な離乳食を見つけてこなければならなかったはずである。なぜそんなコストをかけてまで、離乳を早め、重たい赤ちゃんを産むのだろうか。 ■人類が多産で生後急速に成長する理由 それは、人類が進化の初期に類人猿の棲む熱帯雨林を離れ、樹木のない草原へと進出したことに起因する。熱帯雨林は年中食物が絶えず、安全な場所である。草原へ出ると乾季が長くなって食物が不足する。人類が最初に身につけた独自の特徴は直立二足歩行で、分散した食物を集めて仲間のもとへ持って帰るために発達したと考えられる。 しかし、この歩行様式は四足歩行に比べて敏捷性や速力が劣り、地上性の大型肉食獣には無力であったであろう。 とくに、肉食動物は幼児を狙うので、幼児死亡率が増大したはずだ。そこで、人類は餌食になる哺乳動物のような多産の特徴を身につけた。それは一度にたくさんの子どもを産むか、短期間に1頭ずつ何度も産むかであり、人類は後者の道を選択した。そのため、離乳を早めて排卵周期を回復させ、出産間隔を縮めたのである。 しかし、200万年前に脳が大きくなり始めたために、子どもの成長を早めることができなくなった。すでに直立二足歩行が完成し、骨盤が皿状に変形して産道の大きさを広げられなかったため、あらかじめ頭の大きな赤ちゃんを産めなかったのである。そこで、人類は生後急速に脳を成長させる道を選んだ。