「極超音速兵器」早期探知へ、次世代レーダー研究…防衛装備庁
防衛装備庁が、従来の弾道ミサイルよりも迎撃が難しい「極超音速兵器」への対応能力を高めるため、新たなレーダーシステムの研究に乗り出す。各国がミサイル能力を向上させる中、国産の技術を生かした次世代のレーダーと迎撃ミサイルの確保が必要と判断した。2029年度までに約30億円かけて新型レーダーの核心技術の確立を目指す。 【衛星写真】中国の砂漠地帯で確認された多数のミサイル地下発射施設
極超音速兵器は音速の5倍(マッハ5)以上で飛行する兵器。ロケットで打ち上げられて高空で切り離された後、地上数十キロを変則的な軌道で滑空する「HGV」と、ジェットエンジンなど推進装置を備える「HCM」に大別される。
米国を含む各国が装備化を競うが、中国とロシアが先行し、北朝鮮も開発している。ロシアはウクライナ侵略でHCMを使っている。
極超音速兵器は、一定の放物線軌道で落下する従来の弾道ミサイルとは異なり、コースを予測しづらく、迎撃は難しい。マッハ5で飛来した場合、約500キロ先で探知しても着弾までの時間は5分しかない。
同庁が構想を描くレーダーシステムは、最先端の半導体を組み込んでデータ処理能力を高めるなどし、既存の国産レーダーよりも遠くで目標を探知して、正確に迎撃ミサイルを目標に誘導できるようにする。多数のミサイルが一斉に向かってくる「飽和攻撃」への対処能力も向上させる。
昨年度からHGVに対処する迎撃ミサイルの研究も始めており、新型レーダーはこれと連動させる想定だ。
極超音速兵器への対応を巡っては、米国製の高性能レーダーを備えたイージス艦への搭載を想定する新型迎撃ミサイルも米国と開発することが決まっている。今回の事業はこれとは別で、国産の技術を結集させる。
装備化には技術的な課題の克服に加え、数百億円規模と見込まれるコストが難点となる。来年度予算の概算要求に関連経費として21億円を盛り込む。ミサイル防衛網の継続的な強化は不可欠で、「約10年後の運用を目指す」(同庁関係者)としている。
ただ、有事の際にミサイル攻撃を完全に防ぐことは難しく、政府は22年、抑止の手段として敵基地を攻撃する「反撃能力」の保有にも踏み切っている。