外債運用が最高益けん引、米利上げ前に為替ヘッジ縮小-いよぎんHD
(ブルームバーグ): 世界的な金利急上昇のあおりを受け、多くの金融機関が米国債などで損失計上を迫られる中、外国債券の運用で収益を上げ、2期連続で過去最高の純利益を計上した地方銀行がある。
愛媛県を地盤とする伊予銀行の持ち株会社であるいよぎんホールディングスの前期(2024年3月期)の連結純利益は、前の期比4割増の395億円と大幅増益を果たした。円安など相場を捉えた外債売却益の計上により、国債等債券損益が同3倍超の96億円とけん引した。
SMBC日興証券の調べによると、国内外債券の売却損益などを示す同損益で2期連続の黒字を確保したのは上場地銀73行の中でいよぎんHDのみ。農林中央金庫が今期(25年3月期)に低収益の外債売却によって5000億円超の最終赤字を見込むと発表するなど、債券運用の巧拙がより問われる環境下となっている。
「これはちょっとアメリカの金利が危ないんじゃないか」。いよぎんHDの三好賢治社長が金利の先行きに懸念を抱き、為替ヘッジ付きの外債ポジションを落とし始めたのは21年5月ごろだった。当時、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はインフレ高進を「一過性」と表現していた。
トップとして「売り買いについては一切、口を出さないようにしている」と三好氏は言うが、米インフレの可能性について担当部などに注意を促した。為替ヘッジなしの外債を積み増すなど、利上げが始まる前年からインフレリスクを意識した運用にかじを切った。
22年3月からFRBが利上げを開始し、その後、日米の金利差は拡大。為替ヘッジコストが上昇するなどして、多くの銀行が収益性の悪化した保有債券の売却を迫られた。前期は9割の地銀で国債等関係損益が赤字となる中、いよぎんHDの黒字額は突出している。
異色の経歴
三好氏は松山市内の本社でのブルームバーグとのインタビューで「マーケットなのでやられることは当然あると思う。相場を当てるのは無理なので分散投資をする中でリスクを取りながらも、いかにそれを抑えていくかということだ」と述べた。