学生ローンで30万円を借りる 広げてうちわみたいにして顔をあおぎました 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<11>
《東京で浪人生活をし、いよいよ2度目の大学受験となった年末、受験料20万円が入った現金書留を友人に盗まれた。この事件をきっかけに、大学進学をあきらめた》 【写真】石田重廣さん、感受性が豊かで肉が苦手に「僕が殺したんだと錯覚した」 仲間たちは「両親と相談したら」って言ってくれたのですが、もう僕の中では大学に行くという選択肢は消えていました。大学で何かやりたいことがあったわけではなかったですから。盗んだ彼にはお金が必要な事情があったんでしょう。で、僕は何を考えたか。まずは早く引っ越しをしなければまずいぞ、と思ったんです。 両親から「どうだった?」「大学は受かったか?」って電話がかかってくるだろう。受験料を盗まれたので大学受験はあきらめました、とは話せません。両親に顔向けができない、と思ったの。で、両親の連絡がつかないよう、新しいアパートを借りないと、となったんです。私学は2月の末には結果が出るじゃないですか。だからそのころまでにアパートを引き払って、新しいところへ引っ越さなければ、って思ったんです。でもお金はまったくない…。 《飛び込んだのは学生ローンの店舗だった》 当時は学生でも借りられる「丸井のキャッシング」が出始めていたころじゃなかったかな。だから学生ローンでお金を借りることに、そんなに抵抗はありませんでした。で、いくら必要か。あのとき住んでいたアパートの家賃が1万2000円でしたが、今度はお風呂がついているところに住みたかったのね。「ここいいな」と思ったアパートは家賃4万3000円で、それに敷金や礼金など何カ月分か、あとは当面の生活費で、30万円あればなんとかなる、と。 予備校は池袋だったので、丸井がある。最初はそこで借りようか、と思ったのですが、丸井は分割払いで買い物をしたとき、未成年だと実家に電話すると聞いていた。僕にとって実家に電話されるのが一番まずいので、高田馬場にある学生ローンに行ったんです。 店内で予備校の学生証を見せ、名前と住所、生年月日、本籍地などを記入しました。親の同意は要りません。さあ金額は、となったとき、なぜか「いきなり30万円では巨額なのでダメ」って言われるかもしれないと思って、15万円と書きました。残りは別のお店で借りればいいと。で、1時間もしないうちに15万円が手に入ったんです。あっけなかったですね。 《常人には考えも及ばない行動力。そして決意を固める》
【関連記事】
- 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<1>成功したとは思っておりません 「安くしてぇ~」と同じ甘ったるい声で始球式は大暴投
- 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<12>バイトはクビ続き 正社員にならねば イセエビは食えず、「ぶっ殺すぞ」とまで言われ
- 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<8>すばらしかった竹田利秋監督の平等主義 招待試合で完封、順調だったプロ野球選手への道
- 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<10>まさか友達が…大学進学を断念する 受験料を盗まれるも「仕方ねえな」と
- 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<9>「対外試合禁止」に反発し退学、野球断念 〝母校〟で講演「君たちは幸せなんだぞ」