学生ローンで30万円を借りる 広げてうちわみたいにして顔をあおぎました 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<11>
その足で今度はお茶の水の学生ローンに行き、また15万円。計30万円を持って、お茶の水のクラシック喫茶に入りました。席に座って、まず僕が何をしたか。その30万円を広げてうちわみたいにして、顔をあおいだんです。それをやった瞬間、もううれしくなっちゃって。何がうれしかったって、お札の匂いでしたね。インキの匂い。あんまり品がないけどね。そのとき漂ったあの匂いは、今でも忘れることができません。
その匂いとともに、初めて自分でお金をちゃんと集めてきたといううれしさもありました。これまではお父さんやお母さん、おばあちゃんからのお小遣いや仕送りだったでしょ。小学生のときは新聞配達をしたけど、すぐにクビになった。この30万円は稼いだお金ではありませんが、自分自身で借りてきたお金です。それもわずか2社だけ回って、すぐ貸してくれた。何社も行って断られたのなら、自信をなくしたんだろうけど、すぐでしたからね。
そのときに改めて、大学に行っている場合じゃないぞ、って思いましたね。働いて稼がなければ、との決意が固まったのです。(聞き手 大野正利)
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