【漫画家に聞く】髪を切ったら可愛いのに……無造作ヘアの少女が美容師を拒絶する理由は? ラストが胸に迫るSNS漫画
漫画『君の髪を切りたい』が2024年7月にpixivで投稿された。長い髪をなびかせる主人公が出会ったのは、少し怪しげな美容師。主人公の髪を切りたいと美容師は迫るものの、拒絶される日々がつづく。しかし少しずつ距離を縮めていくなかで、主人公が髪を切らない背景が明らかとなりーー。 切実でラストシーンが胸に迫る漫画『君の髪を切りたい』 作者・ぇぅさん(@xexuxexu)はこれまで二次創作を中心に創作活動をつづけてきた人物であり、本作がはじめて手掛けた一次創作の作品であるという。本作を創作したきっかけ、登場人物を描くなかで意識したことなど、話を聞いた。(あんどうまこと) ーー本作を創作したきっかけを教えてください。 ぇぅ:本作は2、3年前から構想を練っていた作品です。美容師さんの知り合いと話すなかで、美容師さんの仕事は私の目から見たら人を綺麗にしたり、自信を持たせたりといった、素敵な仕事だと感じていました。 ただ知り合いの美容師さんは「他にできる仕事がないから美容師をやっている」といったスタンスで……。そんな思いに対してなにか引っかかるものがあり、本作を描きはじめました。 ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは? ぇぅ:過去の映像がフィードバックするところの演出は時間をかけて描いたので印象に残っています。また背景描写も印象に残っています。自分の描く背景にあまり自信がなく時間もかかってしまうので、本来ならあまり描きたくないところではあるのですが、世界観を表現する上で必要だと思う場面ではちゃんと背景を描こうと思いました。 とくに終盤の海で髪を切るシーンでは光が輝く様子や雲は、日々かたちが違うものであることを意識しながら丁寧に描こうと思い力を入れました。 ーー主人公の部屋の雑多な様子から主人公のキャラクター性を感じました。 ぇぅ:部屋はその人の生活や個性が出る場所だと思います。空になったペットボトルをいっぱい並べたり、その辺にぬいぐるみが落ちていたりーー。主人公の生活感を意識しながら部屋を描きました。 ーー部屋の描写とともに些細な仕草からも主人公の魅力を感じました。 ぇぅ:キャラクターに対して説得力を持たせるために「この人はこういう考えでこういう行動して、こんなことを思っている」といったことを、作者自身が備えた上で登場人物を描写しています。 また自分は可愛いものが好きなので、自分の思う「可愛い」を意識しながら描いています。ただ自分の思う「可愛い」が他の人と異なることも多いですが……。 ーー本作における2人の「可愛い」部分とは? ぇぅ:2人の性格は違いますが、もっと奥の根っこにあるものは少し似ている部分があって。ちょっと変わった人のように見えますが、付き合ってみると楽しい……。そんなところに2人の可愛さはあると思います。 ーー2人の間合い・関係を描くなかで意識したことは? ぇぅ:たとえば1人の女の子が傷ついてて、もう1人が助けるといった構図はよくあるかと思いますが、そんなシチュエーションでも、ある程度の距離感は必要だと思います。 本作の最初では美容師の彼女が「髪を切りたい」と主人公に迫りますが、会話を重ねる過程でお互いのことを知っていき、ちょっと話を聞いてみようかなと思えるーー。徐々にステップアップしていくなかで生まれる関係を意識して2人を描きました。 ーー徐々に関係を深めた結果として主人公が明かした悩みに対する、美容師である彼女の「何も/変わらなかったと思うよ」という返答が印象に残っています。 ぇぅ:この台詞はおそらく主人公が言われたかったことだと思います。「なにか行動していたら変わっていたかもしれない」とか「あの行動をしなければよかった」といった後悔は多くの人が抱いているものでしょう。 ただ、このときの主人公は過去を変えることや救いを望んでいるのではなく、自身でも「何も/変わらなかったと思うよ」と誰かに言ってもらえた方がいいのではと思っていたと感じ、この台詞を描きました。 ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。 ぇぅ:友だちから「一緒に二次創作の合同本を描かないか?」と誘われ漫画を描きはじめました。既存の作品を題材とした二次創作の漫画を描きつつ、昔からオリジナル作品のお話を頭の中で考えていました。本作も頭の中にありつつ、作品として出力できていなかったお話でした。 ーー今後の活動について教えてください。 ぇぅ:描きたいお話はいっぱいあるので、そのお話をちゃんと作品として出力していきたいです。これまで二次創作の作品を多く描いてきましたが、本作のような一次創作の漫画も可能な限り描いていけたらと思います。
あんどうまこと