地震がきっかけで、面倒な洗い物ができるように...「防災」のハードルが下がる考え方
キャンプ好きな3人の女性から成る「CAMMOC(キャンモック)」。防災士の資格をもつキャンプインストラクターとして、"いつも"の暮らしを豊かにするものが"もしも"のときも役立ち支えてくれるという「フェーズフリー」の考え方のもと目指すは、理想的なライフスタイルと防災の両立。 【写真】冷蔵庫や電子レンジがない環境で作る「キャンプ飯」のレパートリーは、日常や非常時の料理のアイデアにも。 そのためのアイデアが、新刊『ラクして備えるながら防災 フェーズフリーな暮らし方』にたっぷり収録されています。 キャンモックのマミさんが、フェーズフリーの普及や、フェーズフリーな商品やサービスの企画、認証を行う「フェーズフリー協会」代表、佐藤唯行さんと対談。その様子を全3回の連載でお届けします。本記事は第3回です。 (構成:三浦ゆえ)
全員がスペシャリストになれるわけではない
【佐藤】『ラクして備えるながら防災』では、子どもの防災についてもたくさん提案されていますが、マミさんはじめキャンモックのみなさんは、ずっとお子さん連れでキャンプをされているんですよね? 【マミ】はい、私の息子がキャンプデビューしたのは生後1か月のときです。生まれたときから、できるだけ自然に触れさせて、使うものも自然なものを選んで育てたいと思っていたんです。穢(けが)れを知らないこの子を育てるのに、どういう環境がいい?何を使うべき?と考えたとき、私の答えは「自然」一択でした。 【佐藤】そう考える親御さんは多いと思うけど、実際やってみてどうでしたか? 【マミ】洗剤も食品も、こんなに添加物が入ってなくてもいいんじゃないかなとか、あれこれ疑問が出てきて、ナチュラルなものひとつで心地よく暮らしたいと思って、どんどん深掘りしていきました。 【佐藤】本のなかで紹介されている暮らし方や住まいのあり方って、災害時にも対応できるフェーズフリーであることはもちろんなのですが、とても素敵に見えました。こんな暮らしをしたい、住んでみたいと思わせてくれるもので、ウェルビーイングも向上すると思います。ただ自然志向というだけではなくて、便利なものは積極的に取り入れていますよね? 【マミ】葛藤もありましたね。都市部に住んでいると自然な暮らしを極めるのはむずかしいし、私はパソコンもスマホも使いたい。便利な機器も積極的に取り入れたい。自然な子育てのコミュニティに参加して勉強にはなりましたが、実践するのがむずかしいものもありました。 できない自分に負い目を感じ、心苦しくなって、コミュニティに足が向かなくなりましたね......。 【佐藤】防災にも言えることだと思いますが、スペシャリストだけができるというものは、なかなか広まらないですよね。 【マミ】あんなに自然な暮らし、子育てがしたいと思っていたのに、私って中途半端でダメだなぁと落ち込みました。そんなときに友人から、「マミちゃんって、めっちゃハイブリッドだよね」といわれて。反射的に、「お、それだ!」と思いました(笑)。 私はハイブリッドなんだと思えたら自信も出てきました。そこから、両者をつなぐことを考えるようになった気がします。まさに今も、便利で最先端なモノが好きな層に、自然な生活のよさやアウトドアの楽しさを知ってもらうには、どうすればいいのかなって。 【佐藤】ハイブリッド、というのはよく理解できます。防災だけに特化した家は、災害に強いのかもしれないけど、日々の暮らしが快適かというと、そうはならないことが多いと思います。