地方の「教育困難校」で起きているリアルな問題。教育現場の課題も昔からがらりと変化している
中山先生は「今は教育観やツール・システムも多様化・複雑化しています。『学力が上がる』ことだけが教育の目的という考えではなく、協調性や忍耐力、自制心などの『非認知能力』も求められる時代になってきています。 1つの指標で完結するのではなく、人間力も上げなければならない。そうすると、学校の先生にかかる負担はとても大きいものになっていきます。学力だけではない、いろんなことを求められるようになって、教育現場は困惑しています」と語ります。
■一筋縄ではいかない学校運営 実際に中山先生が訪れた、とある県の「教育困難校」ともいえる小学校は、一筋縄ではいかない状況に置かれていました。 「SNSの登場によって、先生の目に見える外側のいじめに加えて、目に見えない内部のいじめなども問題視されるようになりました。また、そうしたところから情報を得ているからか、子どもたちが発する言葉に対しても、叱って終わりにできないものも多いです。 現在訪問している小学校は、学年によって授業態度にばらつきがありますが、ある高学年のクラスでは、30人のうち6人がつねに授業で立ち歩いて、進行を妨害しています。『座ろうよ!』と先生が肩に手を触れた瞬間、『あっ! ハラスメント! ハラスメント! 教育委員会! 教育委員会!』と子どもに言われてしまうのです。この言葉は、おそらく外部から情報を得ているからこそ発生しているものでしょう」
問題が起きるクラスがある一方、中山先生はクラス運営がうまくいく学校をどう分析しているのでしょうか。先生によると「授業のデザインがいいか悪いか」がカギになっているそうです。 「いい先生の授業は、集中できていない子のために授業の導入に力を入れています。たとえば、理科の授業で生物を教えるときに、生き物を教師が捕まえてきて『ちょっとこれ見て!』って実物を見せるだけで子どもたちは『エッ! なにそれ!』と食いつくんです。