津野青嵐や清川あさみらが参加。布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK」見どころを徹底レポート
地元の子どもたちによる作品も展示
「織物業の街だと知られていない」というもどかしさは、街の人も感じているよう。子供たちにも知ってもらうため、地元の保育園児や小学生が布をテーマに制作してもらうワークショップを行ったそうで、400点余りの作品が飾られていました。 隣接する機織機の工場跡地は、地上約9メートル、幅約20メートルの巨大な空間。そこにはシカゴを拠点にするネリー・アガシが、山梨県産業技術センターの提供を受けた生地を使用して制作した「mountain wishes come true」が展示されていました。壁から垂れ下がるような巨大な生地に目を奪われます。 ネリーは山叶の建物を見てさまざまなインスピレーションを受け、建物の歴史と彼女自身の歴史をミックスさせて作品に昇華させたそう。場内に流れている音は、サウンドパートナーのライアンがサンプリングしたもので、工場でサッシを作り上げる際の音や自然界の音など、さまざまな音がミックスされています。 このほか山叶にはスタジオ ゲオメトル「Changes of the Mountain」、池田杏莉「それぞれのかたりて / 在り続けることへ」も展示。後者は旧山叶で実際に使われていた家具やユニフォーム、富士吉田の人々の古着や私物が繭で覆われた作品です。
注目のアーティスト津野青嵐の作品は圧巻
続いては旧文化服装学院の建物へ。1980年代まで開校していた建物は、どこか儚さを感じてしまうほど年季が入っています。 2階に展示されているのは、津野青嵐の「ねんねんさいさい」。吊り下げられた赤い布の中央には、ドレスのようなものが配置されています。元々精神科の看護師だった津野は、体が不自由になっていく祖母を介護する中で、「祖母の形がどんどん変化して、ベッドに溶けていくようだ」と感じたそう。もともとファッションが大好きだった祖母の体に合う服を祖母自身と考え、寝ながら着用できる洋服を作り上げたといいます。 またその隣の部屋には、韓国のアーティスト、ユ・ソラの「日々」が。日常の中で見慣れた段ボールや机、ソファなど、全てが布と糸のみで表現されています。無機質なようでいて、どこかに温かみを感じます。