「厚生年金を月10万円もらっている人」は給料いくらから年金を減らされる? 年金と給料の関係がわかる「在職老齢年金早見表」付き
老齢厚生年金の報酬比例部分を月額10万円受け取っている人の場合、給料を41万円もらうと年金が5000円支給停止となり、 60万円を超えると全額支給停止となります。 ■在職老齢年金の注意点 在職老齢年金制度にはいくつかの注意点があります。ここで確認しておきましょう。 ■加給年金 加給年金は基本月額に含みません。そのため、老齢厚生年金の一部が支給停止となっても、加給年金は全額支給されます。ただし、老齢厚生年金が全額支給停止になると、加給年金も支給されません。 ■繰下げ受給 在職老齢年金による年金額の調整は、繰下げ受給をして、実際は年金を受給していなくても、65歳からの本来の受給額で計算されます。支給停止となった額は繰下げ受給の増額の対象となりません。そのため、全額支給停止となった場合は、繰下げ受給をしても老齢厚生年金部分の増額はいっさいありません。(老齢基礎年金は全額増額されます) ■在職老齢年金で支給停止になる人はどのくらいいる? 国税庁「民間給与実態統計調査」によると、2023年における65歳以上の給与所得者の数は550万人となっています。10年前の2013年は377万人、5年前の2018年は523万人であり、着実に増えていることがわかります。65歳以上の人口に占める給与所得者の割合でみても、2013年の12.1%から、2023年は15.2%と3.1ポイント上がっています。65歳以降も仕事を続ける高齢者が増えていることは間違いないでしょう。 では、65歳以上の給与所得者の平均給与はどのくらいでしょうか。同調査から平均給与をみてみると、65歳から69歳は354万円、70歳以上は293万円と、全体平均の460万円よりも大分少ないことがわかります。
ここで年金と給与の平均額を使ってシミュレーションしてみます。 厚生年金受給者の平均受給額は約14万4000円(※) 65歳から69歳の平均給与354万円、月額は約30万円 ※厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より 厚生年金の平均受給額には基礎年金も含まれているので、基礎年金の満額6万5000円を除くと報酬比例部分は7万9000円となります。 合わせて37万9000円となり、50万円以下なので、支給停止にはなりません。 平均的な年金、給与収入であれば、在職老齢年金による支給停止はされないということです。 2018年のデータでは、65歳以上の在職老齢年金による支給停止者は41万人となっています。これは在職している年金受給権者の17%、年金受給権者の1.5%にあたります。年金を受給しながら、給与を得ている人たちの8割以上は、年金のカットはされていないということです。 参照: 年金制度の仕組みと考え方第10在職老齢年金・在職定時改定|厚生労働省 ■まとめ 在職老齢年金の見直しが検討される背景には、支給停止に該当しないように労働時間を抑える「働き控え」を招いている、労働意欲を阻害するなどの問題の解消があります。実際は、ここでお伝えしたとおり、支給停止に該当するほど、年金や給料をもらっている人は少ないわけです。支給停止になるのは、老後に年収600万円を超える収入がある人なので、そもそも支給停止となっても生活には困らないでしょう。 大半の人は在職老齢年金の支給停止を気にする必要はないと思います。長い老後のために、働けるうちは働いて、老後資金を増やしておくといいでしょう。 ■ 石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。
石倉博子