あこがれの白馬岳縦走登山へ! 楽しく歩きながら、しっかり学ぶ。コロンビア登山学校の「登山講座」に密着
1日目、目指すが白馬大池山荘
栂池自然園を出発し、登山開始。1日目は白馬大池山荘を目指す。序盤は登りが続くので暑くなりやすい。衣服の調整をし、各自水分補給をするようにと、伊藤さんから促される。
水分補給のワンポイントアドバイス
「ふだん汗をかいていない人は汗といっしょに塩分も出ていきやすいので、塩分チャージの飴をなめたり、スポーツドリンクを飲むのもおすすめです。水分と塩分をちゃんと摂っておくことで攣り予防にもなります」。 登山中、足を攣りやすい人には必須の豆知識だ。また水分の摂り方も一度にたくさん摂るのではなく、こまめに飲むことが重要なのだそう。水分を少しずつ摂取することで吸収効率を上げられるということだ。 30分ほど登ると「銀嶺水」という湧水ポイントがある。そこで10分ほどの休憩をとることに。天然の冷たい湧き水を飲んだり、行動食を食べたり。バックパックを下ろして小休止を挟み、登りで疲れた身体を癒し、気持ちを切り替える。 「栂池自然園の由来にもなっているツガの木は、この登山道沿いにもたくさん生えていますが、ツガの木の松ぼっくりは青いんですよ。ほら、あそこに! 」。 伊藤さんが差すツガの木のてっぺんには、大きな松ぼっくり。たしかに青い色をしている。 「本当だ! こんな松ぼっくり初めてみました! 」。 ひとりで歩いていたら気付けないことや知らないことがたくさんあるけれど、登山ガイドと歩くことで知れること、気付けることがあるのも大きな魅力だ。
バックパックの正しい背負い方、みんな知ってる?
「バックパックがちょっと歪んでいますね」。 「え、本当ですか? 」。 伊藤伴さんが参加者のバックパックを調整しはじめた。 「バックパックが歪んでいたり、正しく背負えていなかったりすると、疲れの原因になります」。 歩きながら気づいたことをその場でレクチャーしてくれるので、わかりやすいし、身になりやすい。教えてもらったことをひとつずつ取り入れていくことでステップアップにつながっていくのだ。
天狗原が見えた!
栂池自然園から1時間半ほど登り続けると、ようやく視界が開け、湿原が現れた。天狗原だ。空を覆っていたガスもちょうど抜けてくれて、爽やかな夏の青空が広がった。 「じゃあ、ここで休憩しましょうか」と、伊藤伴さん。小屋泊装備が詰まったバックパックから解放されてベンチに腰掛けて、おにぎりや行動食を食べ、思い思いにすごす時間。このあとはまた上り坂が待っているので、しばしのあいだ身体を休めて次に備える。 天狗原をすぎると、今度は登り坂なうえ、ガレ場が待っている。岩の上を歩くのはふつうの登山道と少し違って滑りやすく、体幹でバランスを取りながら歩く必要がある。歩き慣れていない人には難しいので一歩ずつ確実に、ていねいに歩く。 今度は雪田が見えてきた。足並みをそろえるために一旦休憩を挟む。標高も2、000mを超え、少し空気が薄くなるのを感じる。 「ふらふらしたり、空気が薄いと感じる人はいっぱい深呼吸をして水もしっかり摂ってください。呼気からも水分が出ていきます。高所障害の対策としてはたくさん水を飲んでトイレに行くことが効果的です」。 さすが海外登山のガイドを得意とするアドベンチャーガイズに所属しているガイドなだけあり、伊藤さんは高所障害の知識も豊富だ。 今回ロープウェイで急激に高度を上げ、さらに2、000mを超える地点で泊まるので、高度障害が起こることも十分にあり得る。対策と対処法を知っておくことで未然に防ぎ、悪化させないことにつながるので大切だ。 休憩後は、本日の最難関ともいえるかもしれない、雪田の歩行だ。ここは例年8月ごろまで雪が残り、短い距離ではあるが雪上を登らなければならない。クランポンなどを履かずに登山靴での雪上歩行の経験がない人にとっては、なかなか高度な技術だ。 伊藤さんが先頭を進み、ステップを作りながら足の置き方を解説する。 「僕が足を置いたところに爪先で蹴り込むように置いてください。身体を後傾にすると滑るので注意してくださいね」。 ていねいに足を置きながら着実に前進し、だれも転倒することなく登りきることができた。 雪田とガレ場を抜けると乗鞍岳山頂を示す大きなケルンが現れ、そこを越えれば白馬大池山荘ももうすぐそこ。一面に広がるハイマツの森を歩く。 ハイマツの森のなかにライチョウの親子の姿を発見! 初めて見たという人も何人かいて、とてもうれしそう。かわいらしい姿にみなさん夢中でシャッターを切っていた。 ハイマツを進んでいくと、目の前には大きな白馬大池が! その先には白馬大池山荘の赤い屋根が覗く。辺りを覆っていたガスもスッキリと晴れ、青空を映した濃紺の湖が美しく輝いていた。 そして登山開始から4時間ほど。白馬大池山荘にみなさん無事に到着。標高差619m、1日目の行程は楽しく終えられて一安心だ。 ひと息ついて、自由時間を挟んでから談話室に集合。コロンビアスタッフの永山さんによる、コロンビアクイズ大会だ。コロンビアにまつわる、ちょっとマニアックなクイズに正解するごとにポイントゲット。ポイントは、後日コロンビア製品が購入できるクーポンと引き換えてくれるという、なんとも太っ腹なイベントだ。クイズのなかにはコロンビア製品として定番のオムニシリーズについても触れられていて、クイズに答えながら機能性ウエアについても楽しく学べる工夫がされていて、さすが! クイズ大会のあとは夕食まで自由時間。各々辺りを散策してすごしたり。白馬大池山荘周辺には花が咲き終わり、綿毛になったチングルマの絨毯が一面に広がっていた。とてものどかで牧歌的な風景は多くの登山者を魅了してやまない。 先ほど集まった談話室は食堂も兼ねていて、一旦夕食の準備をするために全員が外に出され、17時から第一回目の夕食。 物資の限られた高山帯に建つ山小屋では、そんな環境でも登山者においしいごはんを提供できるようにと各山小屋で工夫がなされている。白馬大池山荘の定番の夕食はおかずがトッピングされたカレーライス。カレーライスとスープはおかわりできるのがうれしい。 夏の山は日が長い。夕食後は表に出て、ゆっくりと黄昏時を堪能するのも山小屋ですごす時間の醍醐味だ。陽が沈んでからも、マジックアワーから夕闇へと移ろいゆく幻想的な湖の景色にじっくりと浸っていた。 その晩、白馬大池の真上には、無数の星がまたたき、天の川がくっきりと現れた。翌日も快晴であることを美しい夜空が約束してくれたようだ。