変わりつつあるアスリートの休養―「これって誰の人生?」女子バスケ・馬瓜エブリン選手が日本代表を辞退した理由
私が言わなければ、休める選手はいないと思った
――東京オリンピック後、代表活動を辞退されました。改めてその理由を教えてください。 馬瓜エブリン選手: オリンピック期間中はもちろん、その前から本当に膨大な量の練習と準備をしてきました。当然、大会にフォーカスして心身ともに集中するわけです。それが終わったあとすぐに、所属するWリーグと次の女子バスケットボールワールドカップに向けた代表活動を並行しながら、もう一度頑張る必要がありました。それを考えたとき、100%のパフォーマンスを出せるかどうかっていうのは、ずっと自分に問い続けていたんです。 ――休むことを決断するのは勇気が必要だったのでは? 馬瓜エブリン選手: そうですね、かなり必要でした。ただ、Wリーグの間に代表の合宿があるという状況で、リーグに集中するだけでも神経をすり減らす部分があるのに、逆に「代表選手のみんなはしんどくないのかな?」って思うくらいタフなシーズンだったのは間違いなかったので。そういう意味で、たぶん私が言わなければ休める人はいないのかな、という思いもありました。私自身、ケガをしたタイミングだったし、ここで発信しないことには女子バスケット界の構造というか、なかなか休めないところ、休む勇気を持てない雰囲気を変えられないと思って決断した部分もあります。 ――ご自身はもちろん、女子バスケ界の今後も考えての決断だったんですね。とはいえ、実際に休むためには協会などの理解も必要になりますよね? 馬瓜エブリン選手: もちろん、最初は代表に参加してほしいと言われました。それはすごくありがたいことですけど、自分自身が今後も長くバスケットを続けていくためには、それは良い選択ではないというのをしっかりと説明させてもらいました。そういう思いを持っている選手って実は私以外にもたくさんいて、ただ言えないだけなんです。選手が休養したいことを伝えられる仕組みがまだ確立されていない。そこは休んでみて自分自身改めて気づけた部分でもあります。 ――実際に休むことを選択した時の周囲の反応は? 馬瓜エブリン選手: チームメイトからは「それが正解だよ」「それが普通だよね」という声をたくさんもらえました。それと、協会の方からは「そういう風に思っていたなんて分からなかった」「気づけなくて申し訳ない」という言葉も頂きました。今後私に続く選手がいるかどうかは分からないですけど、私が休んだことで少しは流れを変えられたと思います。