関東障害リーディングトップ上野翔騎手、原動力はヴィクトリアM制覇の同期・津村騎手の存在
今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は、井上力心(よしきよ)記者が上野翔騎手(38=フリー)にスポットを当てる。年始から過去最速のペースで勝ち星を量産し、石神深騎手らを抑え関東障害リーディングトップを快走中。11日にはJ・G2京都HJをサンデイビスで制覇した。勢いに乗る鞍上に好調の要因や同期の存在、ビッグレースへの思いなど聞いてみた。 ◇ ◇ ◇ 年始から上野翔騎手の活躍が目覚ましい。落馬負傷による約2カ月の戦線離脱がありながら、すでに昨年の6勝を上回る9勝。勝率23・7%と高水準を誇り、自身2度目の重賞タイトルも手にした。プライベートでは今月9日に結婚したばかり。公私ともに充実のシーズンを送っている。とにかく馬に乗ることが大好き。その一心でけがからも何度もカムバックを果たしてきた。 好調の要因を聞くと意外な答えが返ってきた。「特に今までとやることは変えていないし、乗せてもらった馬が頑張ってくれているおかげ。結果的にうまく能力を引き出せている感じ。正直自分じゃないと勝てなかったというレースはない」。 鞍上の追い求めるレベルは高い。「勝てたレースでももっと楽に走らせられたとか。こうしたら1つ着順が上げられたとか、うまくできなかった、どう修正しようかという方が強く残る」。デビューして21年、大好きな馬と変わりなく向き合い続け、高い理想を掲げて反省を繰り返してきた。その積み重ねが今年は数字として表れているように思う。 先日のヴィクトリアMでは、競馬学校同期の津村騎手がG1初制覇を成し遂げた。「素直にすごくうれしかったです。(学校時代)馬乗りは津村が頭2、3個は抜けてたから、何で勝てないのかなと思ってました。馬に対して優しいところが津村の一番の魅力。昔からそうでした」。その津村騎手がG1後の取材で、今年刺激を受けたことのひとつに、同期の上野騎手の活躍を挙げていた。それを伝えると「みんなが頑張っていると同級生として負けられないし、恥ずかしい乗り方はできないですから」。20期生は今後も一緒に互いを高め合う唯一無二の存在だ。 今度は自分の番。自身もJ・G1への思いは強いが、あくまで馬本意を貫き通す。「もちろんジョッキーをやっている以上、1度は経験してみたい風景。ただ自分が取りたいからG1に使うのは違う。あくまで馬に適性があってこそ。その中で勝てれば一番いいですね」。上野騎手が同期、ファンから祝福を受ける景色を楽しみにしたい。【井上力心】 ◆上野翔(うえの・しょう)1985年(昭60)12月23日、熊本県生まれ。栗東・飯田雄三厩舎から04年デビュー。13年から先輩からの助言もあり、騎乗機会を求めて障害レースを主戦場にする。14年に拠点を美浦に移した。JRA通算78勝(うち障害40勝、20日現在)。同期には川田、藤岡佑、吉田隼、津村、丹内らがいる。趣味はゴルフ。ゴルフ以外はほぼ私生活も馬中心に送っている。これまでで唯一という会心の騎乗は重賞初制覇を果たした22年東京JS(ケイティクレバー)。 (ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)