ルヴァンカップのベンチ入りで膨らんださらなる向上心。神戸U-18FW岡奨瑛は得意のドリブルで自らの未来を切り拓く
[6.29 プレミアリーグWEST第10節 神戸U-18 1-1 帝京長岡高 いぶきの森球技場 Cグラウンド] 【写真】「マジで美人」「可愛すぎてカード出る」現地観戦した女子アナに称賛集まる より高いレベルを経験した上で、自分の強みには自信を深めている。絶対的な武器を適切な場所で、適切なタイミングで取り出せば、どんなステージも超えていけると信じて、とにかく目の前に立ちはだかろうとする相手に、勝負を挑んでいく。 「自分の得意なところを、自分の得意な形で出せれば、プレミアでも全然やれると思っています。ドリブルで1対1を仕掛けるところは監督にも認めてもらえていると思うので、練習でもボールを持った時は仕掛けることを意識していますし、自主練も続けているので、そこは磨いていきたいですね」。 既にトップチームの公式戦のベンチ入りも果たしている、ヴィッセル神戸U-18(兵庫)が誇る“左の槍”。MF岡奨瑛(3年=ヴィッセル神戸U-15出身)は磨いてきた鋭いドリブルを繰り出し続けることで、チームのシビアな局面も、自らの未来も、力強く切り拓いていく。 約1か月ぶりのリーグ戦で肌を合わせる相手は、やはりレベルが高かった。プレミアリーグWEST第10節。前節の試合が天候不良で延期となった神戸U-18にとっては、5月18日の神村学園高(鹿児島)戦以来となるプレミアでのゲーム。昇格組とはいえ、好調をキープしている帝京長岡高(新潟)との一戦は、立ち上がりからお互いが攻め合う好ゲームが展開される。 「クラブユースの予選はサイドバックに時間があって、自分が早く受けたりすることでもっと仕掛けていたんですけど、サイドバックのところにプレスが来るのに、自分たちが全然対応できていなくてハマっていたので、自分としてはもっと仕掛ける回数を増やしたかったですね」と話した岡は、定位置の左ウイングでいつも通りのドリブル勝負を繰り広げていたが、自分自身に物足りなさを感じていたという。 それでも際どいシーンを作り出す。前半25分。左サイドバックのDF川井憂翔(3年)からボールを引き出し、スピードに乗ったドリブルからフィニッシュ。ボールは左のポストを叩くも、相手に一瞬で脅威を突き付けると、38分にもやはり川井との連携からカットインシュートまで。軌道は枠を越えたものの、得点への意欲を隠さない。 一方で帝京長岡が攻勢を強める時間帯もあった中で、どうしても守備に時間を割かれてしまうシーンも増えていく。「今日みたいに自分が守備で相手のウイングまで戻らなきゃいけなかった時も、そこからもっとカウンターで出て行かないといけないですし、逆の(森田)皇翔が出て行けていたので、自分の守備の時間が増えても、もっと攻撃できるように体力を付けないといけないと思います」。攻守に試合へ関わり続けることは、クリアするべき課題として明確に捉えている。 1点をリードされた後半18分。タッチラインに出てきた第4の審判員が、“17”という数字が掲示された交代ボードを上げる。「結構僕は後半に代わることが多いので、もっと早い時間帯で結果を出さないといけないですし、今日も点が獲れていないので、まだまだ足りなかったと思います」。スタメンで出た試合は、この日のように60分から70分に掛けて交代することが多く、リーグ戦ではまだノーゴール。チームは終盤に追い付いて勝ち点1を獲得したが、自身のプレーに確かな手応えを得るまでには至らなかったようだ。 2種登録された今シーズンはトップチームの練習にも参加。プロの空気感を直に味わっている。「トップの練習は全部のスピード感が速くて、まだまだ全然付いていけないところもあるんですけど、練習試合に行かせてもらった時には前向きに勝負して、自分で点も獲れたので、その時は楽しかったですね、ちょっとでも空いたらボールを出してくれるので、自分の感覚が出せてやりやすかったです」。 トップレベルのパサーが揃う環境でのプレーが、刺激的でないはずがない。「中坂勇哉くんとか櫻井辰徳くんはメッチャポジショニングが良くて、いつでもワンツーができる位置に顔を出してくれていますし、岩波拓也くんも『自分が持った時はサイドに張っておけよ』と言ってくれて、張っていたらエグいボールが来たので(笑)、やっぱり全員上手かったですね」。いつも以上に能力を引き出される感覚が心地良かった。 4月17日。YBCルヴァンカップ2回戦。FC今治とのゲームで岡はチームメイトのDF山田海斗(3年)とともに遠征メンバーに選ばれ、ベンチ入りを果たす。延長戦の末に勝利を収めた120分間で出場機会は訪れなかったが、ピッチサイドから見つめるプロのフィールドが、より高い向上心を膨らませてくれたことは実感している。 「自分の目で見て、雰囲気を近くで経験したことで、プロの凄さも見ることができましたし、1試合に対する熱量も全然違ったので、良い経験になったと思います。もちろん試合にはメチャメチャ出たかったですけど、帰ってきてからも『トップでやりたいな』とか『楽しかったな』という気持ちがあったので、もっとどんどんトップに行けるように頑張りたいです」。 最近はフランス代表でも頭角を現しつつある若手のホープを参考にしているという。「自分もエムバペみたいに全部スピードだけで抜くタイプではないと思っていて、あまり似ている人を見つけれてなかったんですけど、パリ・サンジェルマンの(ブラッドリー・)バルコラを見た時に『あのプレーは自分も行けそうやな』と思ったので、最近は見るようにしています」。 今はまだ無色に近い原石ではあるが、一瞬で煌きを放つだけの才覚は間違いなくある。神戸U-18の左サイドを疾走するドリブラー。岡奨瑛がこれから描いていく成長曲線が、突如として急激な進化を遂げたとしても、そこには何の不思議もない。 (取材・文 土屋雅史)