巨人・坂本勇人の不振の原因はどこにあるのか? 名コーチ・伊勢孝夫「年齢からくる衰えではない」
現役最多の2375安打を放ち、巨人の絶対的存在だった坂本勇人が不振により二軍調整となった。阿部慎之助監督は「リフレッシュ」を強調したが、坂本自身が「正解がわからない」というほど打撃不振は深刻である。今回のスランプは35歳という年齢から来るものなのだろうか。巨人の打撃コーチ時代、まだ新人だった坂本を指導したこともある伊勢孝夫氏にスランプの原因、解決法を聞いた。 【写真】読売ジャイアンツ「ヴィーナス」オーディション密着取材・フォトギャラリー 【らしくないスイングの原因は?】 今季の坂本を見て、「あれ、おかしいな」と感じることがよくあった。それはこれまでのスイングと明らかな違いがあったからだ。本来、坂本のスイングというのはテイクバックをゆったり取って、パッと一瞬でボールをとらえにいくのだが、今季はこれができていない。わかりやすく言えば、テイクバックがコンパクトになっているのだ。 テイクバックというのは、よく弓を引く動作に例えられることが多い。弓は、引いた腕が最大限に達したところで、ポンと離すのが基本である。バッティングも同じで、たとえば右打者の場合、右腕をゆったり深く引いていくわけだが、最大限に達する前にボールをとらえにいこうとすると、それだけで強いスイングはできない。 坂本が巨人に入った頃、私は一軍の打撃コーチをしていたのだが、彼のバッティングを見て驚いた。下半身を粘り強く使い、テイクバックをゆったり大きく取って、手元にきたボールを叩く。タイミングの取り方が絶妙で、これは誰にでもできるスイングではない。プロで10年メシを食っている者でも、なかなか身につけられるものではない。それほど坂本のスイングはハイレベルなのだ。 坂本に「おい、ハヤト、そのスイングは誰に教わったんだ?」と聞いたことがある。すると、「誰にも教わっていません」という答えが返ってきてびっくりしたものだ。なんでも3、4歳のプラスティックバットで遊んでいた頃から、そのスイングだったという。その話を聞いて、坂本のバッティングセンスは、持って生まれたものなんだと確信した。だから、右打者として最速で通算2000安打達成も十分に納得できる。