ウナギ・サヤカが語るスターダム解雇とその後 全日本プロレスへの参戦、長与千種の指導などで大飛躍
■『今こそ女子プロレス!』vol.22 ウナギ・サヤカ インタビュー 前編 "極彩色に翔ける傾奇者"ウナギ・サヤカ――。プロレスを"踏み台"にするつもりで、芸能界からプロレス界入り。2020年、「スターダム」に入団してからはスター選手のひとりとして大活躍。2022年10月にフリーになってからも人気は衰えることなく、わずか1年3カ月後には後楽園ホールで自主興行を行ない、超満員札止めにした。メディアに取り上げられることも多く、今、世間で最も認知度の高い女子プロレスラーと言っても過言ではない。 【写真】ウナギ・サヤカ フォトギャラリー デスマッチで顔面が真っ赤に染まったカットも 一方で、その人気を妬むアンチも少なくない。かく言う私もそのひとりだったかもしれない。血の滲むような努力をしているにも関わらず人気が出ないプロレスラーを数多く見ているなか、どうしても彼女の人気を心から喜べない自分がいた。 しかし今年9月2日、後楽園ホールで開催された2度目の自主興行。第1試合で入場した彼女の背中を記者席から見た瞬間、涙がとめどなく溢れてきた。無数のペンライトが彼女の眼前に煌々と広がっている。これだけの人をたったひとりで集めた。その事実と、この美しい景色を否定できる者は誰もいないと思った。気づいたら彼女に惚れていた。 目標は東京ドームでの自主興行。前代未聞の馬鹿げた話だが、「ウナギ・サヤカなら実現させるかもしれない」と思わせる。来年4月には、両国国技館で自主興行を行なう。それもあくまで、東京ドーム大会を見据えての開催だ。彼女は本気なのである。プロレスに対しても、人生に対しても。 ウナギ・サヤカはどこから来て、どこへ行くのか。フリーになってからの彼女の軌跡を追った。
【スターダムを解雇され、"ギャン期"に突入】 2022年10月3日、自身のYouTubeチャンネルで、「ギャン期」と称し、他団体参戦をメインに活動していくことを発表した。"ギャン"とは彼女がよく使うオリジナルの言葉で、挨拶だったり感情の高まりだったり、いろいろな意味を表す。"アロハ"みたいなものだという。 当時、スターダム所属のまま他団体に参戦するのか、フリーになるのか、ファンの間でさまざまな憶測を呼んだ。ウナギに真相を尋ねると、「今だから言えますけど、スターダムをクビになりました」と言う。 「『クビ』ってマイナスにしか捉えられない表現だったので、それは言いたくなかった。笑い話にできるくらいになった時に言おうかなと。今はもう笑い話ですね」 人気絶頂のなか、スターダムを解雇されたのはなぜだったのか。「マジでわからない」としながらも、彼女なりに思うところはある。 「東京女子(プロレス)からスターダムに入って、毎回ボッコボコにやられていたし、ついていくのに必死だったんですよ。ベルトも巻いたけどまったく余裕がなくて、今思えば自分のことしか考えられなかったし、それによって傷ついた人がいたことにすら気づけていなかった」 当時のスターダムは、女子プロレス界において一強。スターダムにいれば試合数も生活も、スターになれるということも保障されている。そんなスターダムを解雇され、ウナギは「終わった」と思ったという。自分のプロレスはここで終わりだし、他でこれ以上の存在になることは無理だろうと。 しかし、プロレスをやめるという選択肢はなかった。「人生を賭けられるものなのかもしれない」と思い始めた頃だったからだ。フリーになるのは不安で仕方なかったが、ギャン期という名前に変えて、プラスに変えることができたなら......。とにかく、どこに行っても一番話題にならなければいけないし、それができなかったら本当に自分の人生は終わる。そんな崖っぷちの心境だった。