羽生結弦似の20歳イケメンボクサー丸田陽七太が初の東洋王座戦で判定負け
一方、2度目の防衛に成功した大竹は、「守りに入るとやられると思っていた。評価の高い選手だったので怖さはあって展開も読めなかったが、練習してきた作戦を遂行できた。距離をとられたらまずい。接近戦での対応にキャリアの差が出た。前に出るのが僕のスタイルだから」と、作戦勝ちを口にした。 終盤は、もう倒されなければ、勝てるポイント差だったが、安全策をとらずに最後まで前に出た。連打で16歳下のイケメンのホープを苦しめた。 3年前には、英国の敵地に残りこんでWBA世界Sバンタム級の名王者、スコット・クィッグに世界挑戦した経験がある。これが、35戦目の老獪ボクサー。「ここからさらに老獪さを磨きたい」。36歳を自虐的に使い、返り討ちにした関西の20歳に「将来は怖いボクサーになる」と熱いエールを送った。 その昔、渡辺二郎の世界戦を見た経験があり、具志堅用高と、ボクシング談義を交わしたこともある阪神の岡田元監督も、「ショックな負け方やね。キャリアの差か。最後に、あれだけのファイトを見せることができたんだから、もう少し早い回から動いてもよかったのかもしれへんね。でも、ええ経験になったんとちゃうの」と、高校の後輩の健闘を称え、的を射た感想を語った。 この試合は「スーパーバンタム級世界挑戦者決定戦」と銘打たれていた。 IBF世界Sバンタム級王者となった岩佐亮祐(セレス)が解説席に招かれており、勝者が岩佐への次期挑戦者として浮上することを意識したマッチメイクである。 「(岩佐は)日本人対決を嫌がっているし、(岩佐のような)サウスポーも得意ではない。でもチャンスがあれば、ぜひ」。勝者の大竹は、リング上から遠まわしのラブコールを岩佐に送ったが、当人は、「僕は結果的に不戦勝だったけれど、2度、挑戦者決定戦の舞台を通った。日本人とやるなら、そういうルートを通ってきてもらいたい」と、独特の哲学で断固拒否した。 そして、敗れてなお、未来の世界王者の可能性を見せた丸田にも強烈なメッセージを残した。 「ポテンシャルは素晴らしい。身長は179もあるんでしょ。凄いですね。でも、勝とうとする必死さ、力強さが足りなかった。8回が終わった時点で倒さねば勝てないのに、なぜ、あの11、12ラウンドのボクシングを中盤からしなかったのか。拳をケガ? そんなアクシデントはつきもの。そういうものをひっくるめて、行って、結果として勝たねばならないのがボクシング。この試合をいい経験で終わらせるのではなく、今後、どう克服するか」 そういうことなのだ。 もう無敗のキャリアを競う時代ではない。 20歳の丸田は、何にも代え難い経験を初登場の“聖地後楽園”で踏んだのである。“作られた世界戦”で短命王者に終わるよりも、この日の悔し涙を次なる力に変えた方が絶対にいい。丸田が、ボクシングを始めた頃から付け続けているボクシングノートに、この夜、刻む言葉を、ずっと忘れずに。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)