(株)FORTUNE ~ 海外で高級腕時計の買い付けトラブルの実態 ~
突然の音信不通、そして破産へ
A氏らによれば、2023年10月頃まで購入代金と手数料が振り込まれていた。だが、11月に突然、代金の支払いが滞ったという。同社関係者からは、「決済資金を用意できない」とバイヤーに連絡があっただけで、その後はX氏や関係者と連絡がつかなくなった。 FORTUNEから代金の振り込みが止まったバイヤーは、クレジットカードの支払いに窮し、多額の債務を抱えたままだ。中には、夫婦でクレジットカードの支払いが滞った人や、現役の税理士もいるとC氏は語る。 C氏を含む何名かは、クレジットカード会社にチャージバック(不正利用などの理由でクレジットカード会社がその代金の売上を取り消す事)を申請したが、レシートにサインしていたことで受け付けられなかったという。
腕時計以外の被害も
海外での買い付けは腕時計だけでなく、金にも及んだという。 バイヤーの中には、海外で腕時計のほか、金を買って即現金化し、集めた現金をX氏に渡して報酬を得ていた人もいたという。 また、FORTUNEを取りまとめていたとみられるX氏に、事業資金として月利5%という法外な高金利で現金を貸した人もいたようだ。だが、X氏からは連絡はない。 約60名にも及ぶバイヤーの大半は、大きな負債を抱えて困惑している。 C氏を含む何名かは警察にも相談したが、「詐欺としての要件に該当しない」と言われたと諦めきれない口調で話した。 ◇ ◇ ◇ B氏は取材の最後に、「冷静に考えるとこんな条件の良い仕事なんてないと思う。だが、当事者になってしまうとわからなくなる」と、今の苦しい胸中を語った。 今回のケースは、個人を対象にしたトラブルが中心だったが、こうした被害は法人・個人を問わず誰でもどこでも起こりうる。 高額な取引や新規取引では、相手の人物や会社の十分な審査、チェックが必要だ。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年8月1日号掲載「破綻の構図」を再編集)