(株)FORTUNE ~ 海外で高級腕時計の買い付けトラブルの実態 ~
海外で高級腕時計を買い付けていた(株)FORTUNE(TSR企業コード:380245493、渋谷区)が2024年7月17日、東京地裁から破産開始決定を受けた。債権者約60名に対して、負債総額は約10億円に及ぶ。 海外で高級腕時計を買い付ける「バイヤー」を募集していたが、2023年11月からバイヤーへの支払いが滞り、多額のクレジット債務を抱えたバイヤーとトラブルに発展していた。 東京商工リサーチ(TSR)は、実際に海外で時計を買い付けていた元バイヤーに話を聞いた。 ◇ ◇ ◇ FORTUNEは2021年5月、時計・宝飾品類の古物買取りなどを目的に設立され、2022年頃からバイヤーを募集し始めた。バイヤーの渡航費はFORTUNEが負担し、時計の買い付けにはFORTUNEの関係者が同行、主な渡航先はタイや香港などが多かったという。そして、指定された現地の時計店で購入し、商品は帰国後、X氏に渡すというものだった。 代金決済はバイヤー個人のクレジットカードを利用する。すると帰国後に時計の購入代金と報酬(購入代金の5%)が振り込まれた。 2022年からバイヤーをしていたA氏は、大手求人サイトに掲載された求人広告をみて応募したという。当初、時計の関税などもFORTUNEが支払ったため、何の疑いも持たなかった。その後もバイヤーを続けたA氏は、「融通の利く、割の良い単発バイト」と受け止め、2022年から10回以上渡航したという。そして、紹介料が貰えるため友人もバイヤーに勧誘していた。 ところが、次第に海外で購入した腕時計をX氏がまとめて持ち帰るようになり、バイヤーは時計代金をクレジットカードで支払うだけで、時計を持ち帰ることもなくなったという。A氏は疑問に思ったが、すでに何回も報酬を受け取っており、そのまま買い付けを続けた。
知人に誘われて
そもそも時計の購入代金、バイヤーの渡航費、5%の報酬を考えると、FORTUNEにとって旨味のあるスキームとは思えない。なぜ疑問を抱かなかったのか。 求人サイトの広告掲載をみてバイヤーに応募した人は一部で、大半は友人や知人からの紹介が多かったという。2023年10月に知人に誘われたB氏は、友人がタダで海外に行き、しかも報酬を得ているのを見て「疑問を持つことはなかった」と語る。 B氏は、他のバイヤーが時計を持ち帰らず、淡々とクレジットカードで支払うのをみて、「海外の時計買い付けはこういうもの」と疑わなかったという。 同時期に知人に誘われたC氏は、「知人に何度も熱心に勧められ、そこまで言うならと渡航した。予めクレジットカードのショッピング枠を増額し、一回の渡航で約1,600万円ほど買い付けた」と語る。報酬が5%だとすると、受け取るべき総額は1,680万円にのぼる。だが、時計の金額と報酬は支払われることはなかった。