“SNS不適切投稿”の岡口裁判官を罷免した弾劾裁判「手続の違法」とは? 国会議員が“ガチ裁判”を行うリスク
訴追委員会も弾劾裁判所の「仲間意識」の問題
岡口氏は、訴追委員会と弾劾裁判所の裁判員の「仲間意識」の問題についても指摘した。 前述のように、弾劾裁判所と裁判官訴追委員会はいずれもメンバーが国会議員であり、その議席数に応じて各党に割り振られている。その結果、本来「検察と裁判所」のような関係にあるべき両機関の間でメンバー同士の「仲間意識」がみられるという。 岡口氏:「たとえば、弾劾裁判所の裁判員には、訴追委員会の委員長と同じ党の同じ派閥に属する人がおり、その人は完全に訴追委員会寄りだった。 その裁判員は、弁護側証人の補充尋問で、訴追委員以上に証人をガンガンに攻めていた。 証拠として採用されていない本を持ち出して尋問することもあった。こちらが抗議したにもかかわらずその本を音読し、証人に『この本にこんなふうに書いてありますがどうですか』などとぶつけるという、違法な補充尋問が行われた」 この「仲間意識」の問題については、本件で弾劾裁判所の裁判長を務めた船田元衆議院議員(自民党)も指摘している。船田氏は判決後、共同通信のインタビューのなかで、「信頼性、公平性に矛盾を抱えている」と述べた。 弾劾裁判の罷免判決は、対象となった裁判官から法曹資格を剥奪するという重大な人権制約を与える。しかも、前述のように、運用によっては司法権の独立、裁判官の独立、三権分立を決定的に侵害してしまう危険もはらんでいる。だからこそ、裁判の手続きが慎重かつ厳密に行われることがとりわけ重要なはずだった。 少なくとも、弾劾裁判所の裁判長が裁判手続きの問題点を指摘している事実は、見過ごしにしてはならないだろう。 後編では、弾劾裁判所による事実認定や判決の論理に関する問題点について検証する。
弁護士JP編集部