東証社員にインサイダー取引疑惑 知られざる“開示業務室”とは【WBS】
“市場の番人”と呼ばれる金融庁と東京証券取引所で相次いだインサイダー取引疑惑が市場に激震をもたらしています。企業の公表前の重要情報を扱う知られざる組織の内部は一体どのようなものなのか取材しました。 インサイダー取引とは企業の内部情報を使った株取引で、懲役5年以下、500万円以下の罰金です。東京証券取引所は上場企業およそ4000社の取引を扱い、上場企業が公表する情報などを事前に審査しています。 その東証の上場部・開示業務室の20代の男性社員に企業の未公開情報を家族に漏らしたインサイダー取引の疑いが持たれています。内部情報をもとにした株取引は家族名義で行われ、少なくとも数十万円の利益を得たとみられています。 その不審な取引を把握したのは証券取引等監視委員会。9月、社員や家族の自宅などを強制調査しました。 「順次監視してるからね。ネットの時代で全部わかるから」(監視委の関係者) 東証社員は複数の中小銘柄に関する情報をスマートフォンで送信していたといいます。 “市場の番人”であるはずの東証でなぜ起きたのか。2019年まで東証上場部に勤務していた「法律事務所ZeLo・外国法共同事業」IPO部門統括の伊東祐介弁護士が内情を明かしました。 「とうとう起きてしまったかというところ。取引をやろうと思えばできるという性善説に立った構造に問題がある」(伊東弁護士) 東証社員は個別企業の株取引を禁止されています。しかし、伊東弁護士は上場企業の情報開示に関わる上場部の社員でも口座を開いたり、取引に関わることができることに問題があると指摘します。 では、疑惑の舞台となった東証・上場部 開示業務室とはどんな部署なのでしょうか。 「上場部は約100人弱。開示業務室は50人ぐらいでは。株価に大きな変動・影響があるものは慎重に適時開示情報を記載しないといけない。事前に開示する情報を東証の担当として確認をする立場」(伊東弁護士) 開示業務室では1人で50~100の企業を担当し、重要情報は発表の約2週間前から把握できるといいます。 「当然人間なので記憶に残っている会社の業務が終わった瞬間に、外で話そうと思えば話せるというのは物理的にあり得る」(伊東弁護士)