〈韓国「非常戒厳」とフランス内閣不信任の共通点〉なぜ民主主義国は危機に瀕しているか
その原因をザカリアは、急速に変化する時代に政治が対応できないことに求めているが、その前段階として、ポピュリズムの台頭を歴史的な現象として無視できない。左右両極端に分かれる国内の分断、小党分立による政治の不安定化という状況は、ポピュリストにより煽られた大衆や政治家が大局的な国家観を持たず私的利益に固執する結果である様に思われる。 これを助長しているのが、グローバリゼーションによる格差の拡大、IT技術の劇的な発展、インフレ等の経済危機、宗教的・文化的対立の先鋭化である。既存の政治体制が、これらに対応しきれていない問題がある。
民主主義には自浄機能がある
また、最近の韓国、フランスの例に共通するのは、政治指導者の判断ミスであり、バイデンが再選に固執したこともその種のものである。民主的に選ばれた指導者が、何故そのような判断ミスをしたのか原因を分析し、再発防止することも重要である。 いずれにせよ、ザカリアの主張するように、民主主義的諸制度が尊重される限り、たとえ望ましくない結果が生じたとしても、国民が自覚し民主主義の自浄機能により事態が是正されることが期待できるのであり、失敗が繰り返される独裁体制より結果的に優れていることが近代史の最も重要な教訓であろう。 問題は、民主主義的な諸制度が即効的な自浄効果を保証するものではないことにあるが、少なくとも当面の結果がどうあろうと、民主的な諸制度や手続きが尊重されることについての重要性を政治指導者と国民がしっかりと自覚することが必要であろう。
岡崎研究所