あのウコン飲料に鮮魚販売、学習塾も…知られざる旧統一教会系企業のビジネス展開「日本は教団が世界で保有する富の最大の資金源」との声も
あらゆる手を使って教団に献金させる
だが、統一教会は傘下の教団系企業のビジネスを接点に、「精神世界に興味はありますか?」「無料で手相を見てあげます」などと言葉巧みに近づいてくる。彼らの狙いは、名前と住所を聞き出すことだ。 相手の経済事情を調べ上げ、裕福な人に狙いを定めると、先祖の因縁話などで不安を煽り入信させる。その後は、安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也の母親がそうだったように、あらゆる手を使って教団に献金させる。これこそが問題なのだ。 統一教会の本質は、「祝福」と「万物復帰」に集約される。 「祝福」とは、教祖が決めた配偶者と、国際合同結婚式で婚姻することだ。「祝福」のためには祝福献金や祝福を受けるための合宿など、多額のカネを教団に納めなければならない。 一方、「万物復帰」とは、「神を中心とした地上天国をつくるために、サタン側に奪われた万物を神の側に取り戻さなければならない」という教義だ。 「この世の人も財産もすべては神のものであり、サタン(一般社会)のもとにあるすべてのもの(「万物」)を本来の所有者である神(文鮮明)に『復帰』させることは善であり、救いとなる」というもので、教団では「万物」の中でもとくにカネが重視される。 この教義が悪質なのは、カネ集めのために、統一教会であることを隠して教団に勧誘することをはじめ、霊感商法や福祉を騙った詐欺募金などの犯罪行為さえも「万物復帰」のために正当化されてきたことだ。 霊感商法に手を染めた信者に犯罪の自覚があったとしても、教義によって「善」であり、「救い」とされているので罪悪感はむしろ減り、信者は進んで霊感商法や詐欺的な伝道を行なうことになる。
「ウコンの力」などを教団系企業が製造していた
統一教会系企業が問題なのは、市井の人々が知らないうちに、さまざまな業態で身近に存在している点だ。彼らが手掛けるビジネス自体には問題がないかもしれない。だが、教団系企業は、この「万物復帰」を行なわせるための窓口になっている。 しかも、大多数の国民はどの会社が教団系企業であるかを知らないのだ。 典型的な例を挙げよう。 二日酔いを避けるために酒席の前などに飲む人も多く、全国のコンビニやスーパーで販売されているドリンク「ウコンの力」は、販売元はハウス食品だが、製造元は統一教会系企業の「コスモフーズ」だった。旧社名は日本メッコール。「メッコール」とは韓国の統一教会系企業一和が製造する〝麦コーラ〞とも呼ばれる清涼飲料水のことだ。 コスモフーズは、元は教団系の商社・ハッピーワールドの飲料製造部門で、分割独立して現在に至る。社長をはじめ役員の大多数が、国際合同結婚式で祝福を受けた信者だ。2万平方メートル超の広大な敷地の工場が建つのは、埼玉県児玉郡神川町(旧・神川村)。 文鮮明教祖が3度この地を訪れ、1978年には1610組が合同結婚式のための婚約式に参加した「教団の聖地」だ。「ウコンの力」は、この工場で製造されていた。 プラズマ乳酸菌を配合したキリンHDが販売する機能性表示食品「iMUSE(イミューズ)」シリーズの「iMUSE 朝の免疫ケア」も、2022年3月の全国発売以降、コスモフーズが製造を担っていた(2023年3月出荷終了)。 なぜ、日本を代表する大手飲料メーカーの製品を、教団系企業が製造するのか。「ウコンの力」はコスモフーズが2004年から2020年までOEM(受託生産)を請け負っていたが、「週刊文春」(2022年9月8日号)によれば、ハウス食品は同社が統一教会の関連企業であることを把握していなかったという。また、キリンHDは「宗教上の理由で得意先を選定することは行っていない」という。 もちろん、ハウス食品やキリンHDが悪いわけではない。製品に問題があったわけでもない。ただ、コスモフーズが生産していた「ウコンの力」や「iMUSE 朝の免疫ケア」がヒット商品だっただけに莫大な富が教団にもたらされたのは間違いないだろう。 同社のHPによれば、事業内容は清涼飲料水製造と自動販売機による飲料水販売だ。取引先にはアサヒ飲料、キリンビバレッジ、サントリーフーズ、ダイドードリンコなど大手メーカーが並び、年商は59億円(2020年度)に上る。ところが、奇妙なことに純利益は1900万円(同年度)しか計上されていない。 資料/書籍『誰も書かなかった統一教会』より 写真/shutterstock
---------- 有田芳生(ありた よしふ) 1952年、京都府生まれ。ジャーナリスト、前参議院議員。出版社を経てフリーとなり、主に週刊誌を舞台に統一教会、オウム真理教事件等の報道にたずさわる。日本テレビ系「ザ・ワイド」等にもコメンテーターとして出演。政治家としては北朝鮮拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題等に尽力。著書に『北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実』(集英社新書)、『改訂新版 統一教会とは何か』(大月書店)他多数。 共著に『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』(小林よしのりとの共著、扶桑社新書)等がある。 ----------
有田芳生
【関連記事】
- 〈安倍元首相銃撃から2年〉風化しつつある“宗教2世”問題… 当事者が語る残された課題とは?「もっと大きな議論を国にはしてもらいたい」
- 旧統一教会、エホバ…なぜ世間にこれだけ叩かれてもなお、惹かれる信者がいるのか……そのヒントは“カレーライス”にあった
- 岸田文雄「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」の筋違い…岸田派ブレーン木原が持った「拒否権」の威力
- 〈旧統一教会へ解散命令請求〉「認知症疑いの母から奪った1億円超えの献金は違法だ」裁判中の原告が明かす教団との闘い。2度の敗訴も今後の司法の判断は?
- 80歳超えの“老害議員”たちに翻弄される政界。79歳細田議長が辞意も次期衆院選に出馬意向のなぜ。二階氏、麻生氏、小沢氏ら高齢議員の去就は?