「オスプレイ100年使いたい!」米軍高官が明言 生産終了なのにナゼ? 自衛隊も他人事ではない延命問題
2026年には生産終了の予定
しかし、現実は甘くはありませんでした。まず、ヘリコプターに比べ離着陸性能が悪く、搭載力については同等のエンジンを搭載した飛行機とヘリコプター、どちらにも及びません。 また、構造が複雑なため飛行機・ヘリコプターよりも高価になってしまうという、ティルトローター特有の欠点が嫌われ、輸出については日本のみで終わっています。 とはいえ、万能な航空機というものは存在しません。長所と短所の取捨選択、適材適所が大切であり、「オスプレイ」にしかできない作戦は間違いなく存在します。世界中に展開するアメリカ軍にとって、長距離を高速で展開可能とする「オスプレイ」の長所は何より重要であると言えます。また、北海道から沖縄まで3000kmもの距離がある日本にとっても、「オスプレイ」が役に立たないということはないでしょう。 一方で、思ったよりも売れなかったという事実も否定できません。2026年には生産ラインが閉じてしまいますから、将来的に「オスプレイ」の代替を新造の「オスプレイ」でまかなうことはできませんし、また現在開発中のティルトローター機V-280「バロー」は一回り小型であるため、「オスプレイ」と同等の能力を期待することはできません。
前例は「チヌーク」輸送ヘリ
したがって、「オスプレイ」が持つ能力を、現在と同じように将来にわたって維持することを要望するなら、既存の「オスプレイ」をリフレッシュし寿命を延長することが最も現実的な選択肢だと言えるでしょう。 どのような近代化改修が行われるかは未定ですが、機体構造、すなわち「殻」以外、エンジンやギア、プロップローター、搭載電子機器など全て交換することになるのではないかと推測されます。 なお、こうした改修はすでにCH-47「チヌーク」で行われています。例えばアメリカ陸軍が運用する機体には、1960(昭和35)~70(昭和45)年にCH-47Cとして生産された後で20年の寿命延長が行われてCH-47Dへとアップデートし、さらに20年の寿命延長が施されてCH-47Fとなったものが多数存在します。 もし、本当に「オスプレイ」を100年運用する場合、「チヌーク」のように機体以外全てを載せ替える寿命延長を複数回行うことになるでしょう。 「オスプレイ」は前述したように日本も採用し、陸上自衛隊で運用しています。同機の生産中止が直ちに影響を及ぼすようなことはないでしょうが、離島防衛を始めとして、国防のために飛ばし続ける場合、アメリカ海兵隊の高官が明言した、100年運用するための改修は、わが国でもいずれ検討すべき課題になると考えられます。
関 賢太郎(航空軍事評論家)