客入れ再開のJ1で川崎Fの家長が魅せた「2分間2ゴール」は2年ぶりの得点だった…34歳のFWを支える哲学とは?
2007-09シーズンの鹿島アントラーズに続く、史上2チーム目の3連覇を目指しながら4位に終わった昨シーズンの悔しさが、ゴールへのこだわりを増幅させている。喫した黒星の数は6と優勝した横浜F・マリノスの8を下回りながら、リーグで2番目に多い12の引き分けが最終的に響いたからだ。 引き分けが多いということは、イコール、肝心な場面でゴールを奪えなかったことを意味する。チーム全体の比重を前へかける意味で、連覇を達成したときの[4-2-3-1]から[4-3-3]へシステムをスイッチ。中盤もダブルボランチではなく、アンカーを置く逆三角形に変えた。 新生フロンターレの象徴となる3トップ、左から長谷川、ダミアン、そして家長は中断前に行われたサガン鳥栖との開幕戦でも先発している。しかし、結果はスコアレスドロー。習熟へ時間が足りなかったと思われた直後に、新型コロナウイルスで公式戦が長期中断を余儀なくされた。 「やっていることは去年までと大きく変わってはいないんですけど、意識づけとして3トップの選手が攻撃時にカウンターで出ていく、というのがチームとしてあるので。そういう狙いが出ているシーンも多いし、新しいことに取り組んでいる効果もちょっとずつ出てきていると思う」 攻撃的なスタイルをそのままに、前にかける人数と比重とを増したことでポジティブな効果が生まれつつあると家長は感じている。言葉通りに再開後もそろい踏みしている3トップは長谷川が3ゴール、ダミアンが2ゴール2アシスト、そして2アシストをマークしていた家長も2つのゴールを決めた。 後半7分にもセットプレーから、ダミアンがダメ押しのゴールをゲット。アントラーズを2-1、FC東京との多摩川クラシコを4-0と連勝を飾ってきたなかで新たに加わった、ファン・サポーターとゴールや勝利の瞬間を共有できる喜びを、家長は試合後のリモート取材でこう語っている。 「拍手をしてもらうと選手としてはありがたい。声援で頑張れたり、励まされたりもするので、選手としてはお客さんがいるなかでプレーするのは、あらためて幸せなことだと思いました」 ガンバ大阪を皮切りに国内外のクラブを渡り歩いてきた家長は、2014シーズンから所属した、延べ8つ目のクラブとなる大宮アルディージャでの3年間で確固たる居場所を築いた。しかし、敵として対峙したフロンターレの攻撃的なスタイルに魅せられ、30歳を超えても「必ず成長できる」という信念のもとで2017シーズンに移籍。34歳になったいまもなお「成長」の二文字を追い求めている。 「毎年ゴールは取りたいと思っているので。取れないときもあるし、取れるときもある。いいときもあれば悪いときもあるので、変わらずやっていきます」 2年ぶりのゴールに対してどこか素っ気なかったのは、チームの勝利を第一に掲げているからに他ならない。 昨年11月に負った左ひざ前十字じん帯損傷からの復帰を目指す中村、そして中断されていた6月に右ひざを痛めて手術を受け、全治まで3週間から4週間と診断された小林もいずれ帰還する。そのときに優勝を狙える位置にいるために。寡黙な男がフロンターレをけん引していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)