客入れ再開のJ1で川崎Fの家長が魅せた「2分間2ゴール」は2年ぶりの得点だった…34歳のFWを支える哲学とは?
このとき、家長の右側へFWレアンドロ・ダミアンがフリーで走り込んできていた。攻撃から守備へ突然切り替わった状況で、家長の対面にいたDF染谷悠太は的を絞りきれない。ダミアンへのパスもあるのでは、と予測した染谷が体重を左側に傾け、両足の間がわずかに開いた直後だった。 「とりあえず打ってみようかな、という感じでした。たまたまいいところへ飛んでくれた。相手の股の間を通りましたけど、別に股の間を狙ったわけではないので。これもラッキーでしたね」 レフティーの家長が右足でボールをもっていた体勢も、対峙した染谷の判断を迷わせたのだろう。利き足ではなかったが、それでも強烈な弾道と化したシュートは染谷の股間を通り抜け、ダイブした韓国代表GKキム・スンギュが必死に伸ばした左手をかすめてゴール右隅へと突き刺さった。 昨シーズンのリーグ戦で無得点だった家長にとっては、2018年11月10日のセレッソ大阪戦以来となるゴールだった。この試合でフロンターレはJ1連覇を決め、中盤の右サイドを主戦場としながら、前線で見せた神出鬼没の動きを介して攻撃を活性化させた家長は2016シーズンの中村、2017シーズンの小林に続いて、史上初の同一クラブから3年連続で輩出されるMVPに輝いた。 再開後の8日間で3試合を戦う過密日程のなかで、前半16分にセンターバックのジェジエウが負傷退場。左サイドバックの車屋をセンターバックへ回し、コンディションを考慮してリザーブに回していた登里を急きょ投入する想定外の展開のなかでも勝利をもぎ取った要因を、試合後のオンライン会見に臨んだフロンターレの鬼木達監督は、家長が立て続けに奪った2ゴールを帰結させた。 「アクシデントがあったなかで前半に点を取れたことが、こういう形になったと思っている。とにかく得点というものを今シーズンは大事にしているので、そこで結果を出してくれたことは評価できる」