ポテトチップスを食べ続け、7歳で失明…人間の味覚を子供の頃から鈍らせる食品の正体
ジャンクフードの「止まらない現象」
大手の食品会社には顧客の心理や人体などを研究する極めて優秀な社員たちがいる。彼らのマーケティングの王道は「同じ人に何度も食べてもらう」ことだ。 言葉を選ばずに言うと、「顧客をいかに中毒にするか」に力を注いでいるのだ。 スーパーでリンゴを4個買ってきて、そのうちのひとつのリンゴの皮をむき、食べやすい大きさに等分して、皿にのせて食べ始めたとする。完食したあと、あなたはどんな気持ちになるだろうか? よほどの大食漢でもない限り、「食べ始めたら止まらなくって、残りの3個も食べてしまった」ということはないはずだ。1個食べて満足するか、他のものが食べたくなるだろう。これはバナナでも、イチゴでも、野菜サラダでも同じだ。 ところが、ポテトチップスは食べ始めると「止まらなくなる」。袋を開け、はじめは数枚だけ食べるつもりが、しだいに袋に入れる手が止まらなくなる。袋の中のチップスはみるみる減っていき、最後に残った小さなカスのような破片まで丁寧にたいらげてしまう。 そして、あろうことか、翌日も同じチップスをコンビニエンスストアで買ってきて常備してしまうのだ。その他のジャンクフード──チョコレート、フライドポテト、また糖分の多いジュース類を飲んだときにも同じような「止まらない現象」が起こる。 天然のものを食べたときには起こらないこの現象が、ジャンクフードを食べたときにだけ起こるのはなぜか。
人間に本来備わっている味覚を狂わせる食品
人間が味覚を感じるのは「味蕾(みらい)」だ。舌の表面にあるブツブツとしたもので、赤ちゃんの口の中には約1万個あり、それが加齢とともに減少していく。成人で約7000個、高齢者では約3000個に減ると言われている。 リンゴやバナナなど天然のものを食べたときには、ひと口ごとに味蕾で感じる喜びが薄れ、だんだんと違う種類の味を欲しがるようになる。この機能があるからこそ人は、様々なものをバランスよく食べるようになっている。 ところが、人間に本来備わっている味蕾の感覚を著しく麻痺させてしまう食べ物がある。それこそが「超加工食品」だ。米国糖尿病学会によると「糖分、塩分、脂肪を多く含む加工済みの食品。硬化油、添加糖、香味料、乳化剤、保存料などの添加物を付与して、工業的工程によって作られる、常温でも保存することができ、日持ちする食品」のこと。 これによって天然のものを食べたときとは真逆のことが起こる。 「これをずっと食べ続けたい」 という感覚に陥るのだ。超加工食品による味覚の変化こそが食べすぎにつながり、肥満を引き起こし、食べ物に多様性を求める味蕾本来の性質を破壊してしまう。 一度このサイクルに陥ると、天然の食物の味を感じにくくなり、濃い味のジャンクフードでないと「食べた気」がしなくなるのだ。