【映画『本心』水上恒司さんインタビュー】本心はどこに!? AIは人間の欲望や業、そして心にどんな影響を及ぼすのか?
本作では、次第に仮想空間と現実世界の境界線が曖昧になっていきますね。 AIを使わない僕には全くないことでしょうが、とはいえカメラの前で表現するものは、僕が現実世界で感じていること――何を肯定し、何を否定し、それに対してどう思っているかなど――が、カメラの前で出ていくことでもあります。だから、仮想と現実の境界が曖昧になっていく感覚は、そう遠くない気もします。僕が芝居を通じて映画やドラマという仮想空間を作ることに快感を覚えるのと同じように、AIの中で仮想空間を作るのが楽しいと言われたら、同じことかもしれないとも思いますね。 朔也は亡き母をVFで作りますが、それが可能な世界なら、水上さんも作りたい人や生きものはいますか。 僕をすごく可愛がってくれたという曾祖父に会ってみたいですが、朔也のようにそれを自分のプライベートなスペースに持ち込みたいとは思いません。興味はありますが、今の僕は、やっぱり作らないでもいいかなぁ。
将来の自分は――
本作は今と地続きの近い将来が舞台ですが、水上さんが“こんな未来になればいいな”と漠然と考える理想の未来像はありますか。 国民のために政治をする政治家が、政治をする世界になって欲しいですね。そういう発言も、日本人は全くしないですし、しない理由も分かりますが、別に悪いことを言っているわけではない。そういうことを普通に議論できる芸能界になってもいいんじゃないかな、とは思います。 ご自身の将来については、どう考えていますか。 僕はまだ25歳ですが、40歳あたりから勝負をかけたいなと思うので、その頃には、ある程度の規模感・スケールのある作品で、ある程度の仕事が任せられるような経験と実力を積み重ねられてたらいいかな、と思います。先ごろ真田広之さんがエミー賞を受賞されましたが、本当に素晴らしい先輩方が活躍されているので、負けないように自分もそれまでに積み重ねていきたいです。 独立されて水上さん自身の環境も変わられたと思いますが、それに伴う変化をどのように感じていますか。例えば、脚本を自分で読んで出演作を自分で選べるようになった、など。それによってストレスは変わりましたか? 脚本や作品選びを含めて、これまで人に任せていた部分を、すべて自分自身で決めていかなければならない状況に変わりました。そうなるとプレッシャーや緊張感は、以前に比べてかなり大きくなりました。もちろん今の方が、精神的にも良好なのは当たり前ですが、心労が別の種類のものになったとも言えますね。ただ、評価や成果、あるいは酷評や批判などもすべて自分のところに来る、とも言えます。それでもやっぱり今の方が、自分にはやり易い状態です。 作品を選ぶ価値基準は、どこに置いてますか。 基本は、ただ自分がやりたい、面白いと思うものを選ぶだけ。自分が選ぶというよりは、まだ選ばれる立場なので……。ただ、「2000円近いお金を払って見に行く価値がある作品か否か」は考えます。ジャンルを問わず、「価値があるな」と思える作品作りをしています。一方で地上波のドラマは本当に影響が大きいので、むしろ悪い影響を与えないかどうかを考えます。ただ、作品選びの段階では、まさかこうなるとは……と思わぬことが起きてしまうこともあるのですが……。 最後に、水上さんは常に“本心”で話をされますか? 人と相対する際に心がけていることを教えてください。 嘘はついていないので、本心で話していると思いますよ。気を付けているのは、見栄を張らないこと。上下関係なく、つい見栄を張ってしまうと、どこかで必ずツケが回ってくるものだと思うので。基本は本当に思ってることを言うけれど、嘘をつかないためにも、口に出さないことは出さないという選択をしていくのを心がけています。