【映画『本心』水上恒司さんインタビュー】本心はどこに!? AIは人間の欲望や業、そして心にどんな影響を及ぼすのか?
脚本を読まれた感想、内容的に惹かれたのはどんなところでしたか? この物語は、もはや遠い未来ではない、いや、既に現在でもあり得ることなんですよね。そんな中で本作がどういう人たちに刺さるのか、どう受け止められるのかについては、僕はいまだに分からないでいます。でも、それでいいと思うんです。観る人たちに色んな余白や色んな可能性を与えられることこそ、本来あるべき映画の姿だと思うので。 消化が悪くない作品もあるわけですよね!? 水上さんの「消化が悪いのが心地よかった」という公式コメントが、今ひとつしっくり来なくて……。 僕は、「やり切った!」とスッキリすることは、あまり良くないと思っているんです。だって、その“役”は自分自身ではないのに、自分自身で満足がいくって、僕の感覚だとあまりなくて。まだ25年しか生きていないので、世の中の全てを分かる訳がない、という前提での話ですが……。 もちろん「分かりやすいこと」は、ある種の武器にもなりますし、ある種の価値があると思います。でも、『本心』のような色んな可能性をはらむ作品と出会えたことが、まず嬉しかったんです。世の中って、もっと分からないことが沢山はびこっているのだ、ということが再確認できた意味でも、まだまだ自分は学ぶことができると肌感覚で実感できて、それが心地良かったんだと思います。
石井組の現場は――
水上さんが演じた岸谷は、主人公の朔也に親切なようで、同時に足を引っ張るような感じでもあります。岸谷に対して、どんなことを考えましたか。 まず、僕がイメージしていた朔也ではなかったんです。池松さんが生み出される朔也が絶対に正しいし、イメージと違ったからこその楽しさもあって、そんな中で、朔也の足を引っ張って闇の方に引きずり込もうとする岸谷を作っていくのが面白かったです。ただ、そういう悪役を演じる時に気を付けないといけないのが、自分が悪者であることを出そうとすると、悪役はその途端に死んでしまう。そこに気をつけながら演じるのも、すごく楽しかったです。 そんな岸谷の“本心”って、何だったんでしょうか? 登場人物の中でも岸谷は特に若いキャラクターなので、本当に一生懸命生きているだけなんだろうな、と思いました。こういう若者が世の中にはたくさんいて、不器用に生きているんだな、と。中には岸谷のように、生きていくために罪を犯してしまう子もいるだろうし。もちろん犯罪は断罪すべきことですが、その動機や理由を考えると、単純には善悪で切れないし、切り捨てるべきではないと思うんです。つまり岸谷は、今の若者を象徴するようなキャラクター。観る人や観る場面によって、悪い奴にもいい奴にも見える、多面的なキャラクターですよね。 濃く絡んだ、朔也役・池松さんとお芝居で対峙された感想は? やっぱり池松さんって、肉体と精神がちゃんと存在しているんです。池松さんの、その(役としての存在が)図太いあり方がスゴイと思いました。だから僕は、朔也(の心)を少しでも動かそう、動かすことが出来たらいいなと思いながら、岸谷として対峙していました。