「ピンポイント」で日本初の月面着陸へ JAXAスリムが20日に挑戦
検討と開発に20年…思いを込め、20分の一発勝負
日本はこれまで何度も月面軟着陸を検討しながら、実現していなかった。かぐやは、開発初期には着陸機を載せる計画だったが、観測機器を優先するなどのため見送られた。かぐやに続く月探査として2000年頃から検討された着陸機「セレーネB」の構想を源流とし、紆余曲折を経て、コンパクトな機体を実現すべく開発が進んだのがスリムだ。
坂井氏は「20年もかけて検討、開発し、多くの人の思いが小さな機体に詰まっている。宇宙(の探査機など)に特有の話だが、地上で開発し、実際の宇宙環境で試せない一発勝負となる。万全を尽くした。わずか20分で試されるが、クリアして何としてもピンポイント着陸を成功させたい」と話す。 政府がスリム計画にゴーサインを出した2015年には、新聞などが大きく報じて注目された。当時の取材では18年度にも打ち上げる計画だったが、その後、設計の見直しや搭載ロケットの変更の必要に迫られた。また昨年3月の大型ロケット「H3」1号機の失敗の影響も受けてずれ込み、実現までの過程は“スリム”とは言い難いものとなった。
一方この間、米主導の国際協力による大規模な月探査「アルテミス計画」に日本が19年に参加を表明するなどして、月への関心は高まり続けている。日本初の月面着陸という待ち焦がれた一大イベントだが、一時の盛り上がりに終わらず、宇宙科学、宇宙開発の開拓者として歴史に名を刻むよう、スリムに期待している。 (草下健夫/サイエンスポータル編集部)