「ピンポイント」で日本初の月面着陸へ JAXAスリムが20日に挑戦
日本が20日未明、実証機「スリム」によって月面着陸に挑む。旧ソ連、米国、中国、インドが達成済みで、成功しても5カ国目。だが決して後塵(こうじん)を拝するのではなく、技術の中身に大注目だ。これまで各国の月面着陸は位置の誤差が数キロ以上だったが、桁違いの100メートル級を目指す。着陸精度の制約から「大体この辺」と降り立っていたのに対し、ピンポイントの着陸となる。宇宙科学や月面開発の飛躍につながるだけに、乗用車より小さいほどの機体に、大きな期待が集まっている。
優位の技術で世界に貢献
スリムは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の計画。月面へのピンポイント着陸を小型軽量の機体で実証することを通じ、効果的で高効率の月・惑星探査、将来の資源開発につなげる。機体は高さ2.4、幅2.7、厚さ1.7メートル。燃料を含む重さは700キロほどと、1トン超~数トン級の従来の着陸機より軽い。名前は「Smart Lander for Investigating Moon(スマート・ランダー・フォー・インベスティゲーティング・ムーン=月を調べるスマートな着陸機)」の頭文字「SLIM」に由来する。開発費は約149億円(打ち上げ費用の一部と初期運用費用を含む)。
スリムの坂井真一郎プロジェクトマネージャ(JAXA宇宙科学研究所教授)は「ピンポイント着陸を実証できれば世界初だが、そこにだけ意義があるのではない。他国の持たない技術が非常に大きなアドバンテージ(優位)となり、今後の国際協力で役に立てる」とアピールする。 昨年9月7日、エックス線天文衛星「クリズム」と共に大型ロケット「H2A」で鹿児島県の種子島宇宙センターから、38万キロ離れた月を目指して打ち上げられた。地球を周回する楕円軌道に投入された後、月の引力などを利用して軌道と速度を変える「スイングバイ」をし、いったん地球から130万キロまで遠ざかった。その後も順調に航行し先月25日、月上空600~4000キロを南北に回る楕円軌道に到達した。さらに高度を下げた楕円軌道に移り、着陸の準備へと進んでいく。