植田総裁の発言が円安容認と受け止められ1ドル160円台まで円安が進行:政府は為替介入実施か
為替介入が行われたか?
29日のアジア市場では、朝方に1ドル160円を付けた後、ドル円レートは1ドル159円台前半で推移していたが、13時台に入って一転して円高に振れ、1ドル155円近くまで円が買い戻された。その後29日の海外市場では、ドル円レートは1ドル154円台と156円台の間で大きく変動する不安定な動きが続いた。 1時間以内に4円程度も円高に振れることは、通常の取引では起こりにくいことだ。日本が休日でアジア市場でのドル円の取引が薄商いであったため、価格の変動(ボラティリティ)が高まっていたことを考慮に入れても、政府による為替介入があったことが疑われる状況だ。政府は為替介入の有無を明らかにしていないことから確実ではないものの、覆面で為替介入が行われた可能性は比較的高いのではないか。 仮に為替介入が行われた場合には、それが、円安が進んだ先週末ではなく週明けのタイミングとなった理由は2つ考えられる。第1は、朝方に1ドル160円の節目を超えたことで、日本の当局の円安への警戒感が一段と高まったことに加えて、日本の為替介入に難色を示す米当局を説得する材料になったと考えられる。第2に、日本市場が休日でアジア市場でのドル円の取引が薄商いであったことから、比較的規模が小さい介入でも為替市場を大きく動かすことが可能な状況であったことだ。 為替介入が行われた場合、そこには政治的は背景もあるのではないか。足もとの円安進行を受けて、企業や個人の間からは、さらなる物価上昇への懸念が示されている。そうした中、28日の衆院補選で自民党が全敗したことから、政府は、為替介入を実施することで、円安対応を行ったとの証拠づくりを国民向けに行い、支持の回復を狙う必要が出てきた可能性もあるだろう。 ただし、為替介入の効果は大きなものではなく、時間稼ぎでしかない。政府の為替介入と日本銀行の利上げが組み合わされれば、円安阻止に向けて相応の効果を発揮することが期待できるが、26日の金融政策決定会合で、日本銀行は円安阻止のために早期に追加利上げを行うことに慎重な姿勢を見せたことで、政府と日本銀行の強い連携への期待は後退してしまった。 ドル円レートは早晩1ドル160円を超える円安となり、いずれは1ドル165円を巡る市場と当局との攻防の様相となるのではないか。