深刻化する世界のプラごみ汚染防止へ条約づくり進む 原案まとまるが規制は難航必至
世界でプラスチックごみによる環境汚染が深刻化している。プラスチックは人々にとって極めて身近な存在だ。日々の生活や社会の利便性を高めることから、世界の生産量と使用量は増加の一途をたどる。この傾向に合わせるようにプラごみの量も増え続けている。 環境中に流出したプラスチックは分解されにくい。陸地や川から海に流れ込み、漂流するうちに砕けて大きさ5ミリ以下になった「マイクロプラスチック」は、有害化学物質を吸着して海の生き物の体内に入る。そして食物連鎖を通じて人間の健康に悪影響を与える可能性が指摘されている。
この世界的なプラごみ汚染の拡大を何とか解決しようと、国連の下で国際条約づくりが進んでいる。24年末までの策定を目指してこれまで2回、政府間交渉委員会の会合が開かれ、条約の原案がまとまった。しかし、条約がプラごみの排出や廃棄を何らかの形で規制し、法的拘束力がある内容になるのか-。この最大の課題については見通せず、今後の各国間交渉は難航が必至だ。
年間1億700万トンが環境中に流出
国連環境計画(UNEP)は今年5月に「Turning off the Tap」(蛇口を閉める)と題した世界のプラごみ汚染問題を概観する報告書を公表した。表紙は蛇口からプラごみが流出するイメージ画像で、環境中に流出するプラごみを食い止める必要があることを訴えている。 報告書はまず、世界のプラスチックの生産量と使用量は1950年以降飛躍的に増加し、毎年4億3000万トン生産され、このうち3分の2以上はすぐに廃棄物(ごみ)になる使い捨て製品(短命製品)で、その量は増加の一途だと指摘した。そして生産量はこのままでは2060年には現在の3倍に達すると予測している。発展途上国の生産・使用量は今後確実に増えるため、先進国が生産・使用量を減らさない限り世界の総量は増える。
報告書によると、生産、使用されたプラスチックのうち、2020年時点で約2億3800万トンがごみになり、約1億700万トンが海を含む環境中に流出した。また、ごみの発生量は40年には4億トンを超え、環境への流出量も増えるという。