38歳元W杯戦士・駒野友一JFL今治で奮闘中
「もちろんすごく嬉しかったですけど、カテゴリーで考えるとやっぱりJリーグで続けてプレーしたいという思いはありました」 オファーを受けた直後の偽らざる胸中を、駒野はこう打ち明ける。それでも岡田氏はベスト16に進出した南アフリカ大会で苦楽をともにした日本代表監督であり、小野氏には年代別の日本代表監督として、そしてサンフレッチェ監督としても指導を受けた。簡単には断れない自分がいた。 「それで家族と話し合って、いままで僕のサッカー人生に関わってくれた監督に対して、奥さんも『恩返しをするタイミングじゃないかな』と言ってくれて。確かに今シーズンはJFLを戦っていますけど、これを来年につなげるというか、来年にJ3へ昇格すればいいことだと思えたんです」 岡田氏の母校、大阪府立天王寺高校の後輩で、ガンバ大阪やヴィッセル神戸などで活躍したMF橋本英郎(40)、北海道コンサドーレ札幌などでプレーしたFW内村圭宏(36)、ロアッソ熊本などでプレーしたDF園田拓也(34)らのベテランを、駒野とともに迎え入れた理由を小野監督はこう語る。 「若い選手を育てられるチームを作っていくなかで、経験のある選手が、それも若い選手のロールモデルになれる選手がほんの数人でもいれば、彼らの背中を見ながら大切なことを発見して、若手が戦える選手へと伸びていく。駒野は技術があるし、戦術眼も高いけど、何よりも選手として絶対にやらなきゃいけないこと、当たり前のプレーの基準が彼は高いんです」 たとえば逆サイドにボールがあるときのポジションの絞り方。あるいは、攻めているときにカウンターを受けないためのポジション取りなど。小野監督をして「なかなか見えにくいとこで、絶対にさぼらない。だからこそ、代表にまで上り詰めた」と称賛させている駒野は、ピッチの外でも大仕事をすでに果たしている。
新シーズンが始動した直後のこと。ミーティングの終盤になって、小野監督は「選手たちでシーズンの目標を決めてほしい」と告げ、コーチ陣とともに部屋を出た。そのときの心を「自分たちで決めた目標ならば、どんな状況になっても貫くことができるので」と打ち明ける。 四国リーグからJFLへ参入して今シーズンで3年目。すぐにJFLもクリアし、J3へと通じる扉を開ける青写真は脆くも崩れ去った。4位以内が成績面の条件とされるなかで2017シーズンは6位、昨シーズンは5位に終わった。勝負をかける今シーズンへ。ミーティングの音頭を取り、目標としてJFL優勝を選手全員で共有させたのは駒野だった。頂点を意識させた狙いをこう明かす。 「いままでは昇格だけを目標にやっていたみたいですけど、実際に戦うのであれば優勝争いをして、優勝して昇格する方が次につながると思ったんです。目的が昇格だけでは今シーズンだけで終わってしまうので、しっかりと将来的なことを考えて、チームがひとつ上のステージに行ったときにいい戦いができるように、と考えているので」 JFLを戦うのは16チーム。北は青森市のラインメール青森から、南は宮崎市のデゲバジャーロ宮崎とホンダロックSCが参戦するなかで、唯一の四国勢である今治は片道で数時間のバスによる遠征を行うこともある。アウェイの環境なども調べたうえで、駒野も覚悟をもってJFLの舞台に挑んだ。 「インターネットでもいろいろ調べましたけど、でもわかるのは文字だけなので。実際に来なければ移動やアウェイの環境などもわからなかったし、それでもある程度のことは覚悟していたので、もちろん戸惑いはありましたけど、サッカーをやること自体は関係ない。しっかりと結果を出せばJ3に昇格できて、もっといい環境でできるので」