<フィギュアスケート>新時代の五輪を制した羽生結弦の価値
■消去法的に羽生が金メダルを獲得 ソチ五輪、男子フィギュアスケートのフリープログラム(FP)では、羽生結弦、パトリック・チャン、高橋大輔らのメダル候補が、のきなみ4回転や、トリプルアクセルの難易度の高いジャンプに失敗。消去法的に、冒頭に4回転サルコウにミスしたものの、最もミスが少なく、立ち直りを見せた羽生が金メダルを獲得するに至った。 そのミックスゾーンで羽生は、「悔しい」と言ったが、ショートプログラム(SP)の得点101.50は史上最高であったが、FPの178.64得点(技術点89.66点、演技構成点90.98点、減点2点で、SP、FPの合計280.09点)は、GPファイナルで優勝したときに出した自己ベストを15点以上も下回ってしまう平凡な得点だった。 ■ロシアの重鎮「誰にもメダルを与えるべきではない」 ロシアの地元紙は「勝者無き勝利」と報じ、タス通信は、ロシアの有名なコーチである重鎮タチアナ・タラソワ氏の「率直に言って、メダルを誰にも与えるべきではない。私の記憶では、こんなに転んだ五輪チャンピオンはいない」というコメントを伝えた。 これらの辛口の批評も踏まえて、羽生結弦の金メダルをどう総括すべきだろうか? 全日本2位でインストラクター及び評論活動をされている中庭健介氏は、「4回転の時代に入っての初めての五輪。そこで、どの選手も積極的に攻めたことに意義があると感じました」と言う。 ■新時代 ミスは高いレベルを求めた結果 「前回のバンクーバー五輪では、4回転をプログラムに入れなかったエヴァン・ライサチェク(米国)が金メダルを獲得して、4回転論争が起き、採点方法も変わりました。そういった流れの中、勝つためには、どの選手もリスクの高い4回転ジャンプを入れ、しかも、プログラムの中に高いレベルのスピン、ステップが必要となっています。体力、集中力、共に継続することが難しく、ミスの起こりやすい状況になりました。どの選手も、それでも、挑戦を続けた結果、ミスが出ました。羽生選手は、4回転を2つ入れて、冒頭のサルコウでは、転倒してしまいましたが、トゥループは成功させました。チャン選手も、ジャンプにミスが目立ちましたが、それらは逃げずに、よりアスリートとして高いレベルを求めた結果なのです。私は勝者なき勝利ではなく、発展しているフィギュア界を象徴する勝利だと考えています」