<フィギュアスケート>新時代の五輪を制した羽生結弦の価値
■前回大会 無難な演技で金メダル獲得に批判 確かに、前回のバンクーバー五輪では、失敗するリスクを恐れて、4回転ジャンプをプログラムから外していたエヴァン・ライサチェクが金メダルを獲得して、大会後、銀メダルに終わったエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が、辛辣な批判を繰り広げた。また銅メダルの高橋大輔も、着氷ミスしたが4回転に挑戦しての銅メダルだった。その五輪での金メダルの賛否が発起点となって、4回転ジャンプを軽んじないような、採点方法に改正されていく流れが生まれ、ソチでは4回転を入れない金メダルはありえないという時代になった。 元全日本4位で、フィギュアスケートに関する著書もある今川知子さんも、「4回転時代がもたらした勝利」と総括している。 ■4回転時代 “攻める演技”をしなければ勝てない 「私は、滑走順がパトリック・チャンに心理的な影響を与えたのだと思っています。目の前で羽生選手がミスをしたことで、『もっと攻めれば勝てるかも』と、プレッシャーを与えたのでしょう。これも4回転時代となり、高いレベルのジャンプに挑戦していかねば勝てない。しかも、それだけでなく、ファイブコンポーネントの点数も、求められるという時代になっているからこそ、起きた現象だったと思うのです。つまり攻める演技をしなければ勝てない時代で、さらに次のオリンピックは、競技レベルが上がるのではないでしょうか」 つまり、高いレベルでの戦いだったからこその心理戦が、導いたそれぞれの選手のミスだったというわけである。すべてのジャンプに成功しての完璧な作品が、金メダルであれば、誰も文句が言えなかったわけではあるが、難易度の低いジャンプに挑戦して、完成度が低ければ意味はない。裏返せば、それだけ高いレベルでの、見えない戦いがあったわけである。それも4年に一度のオリンピックの舞台ゆえ、起きてしまったミスなのだろう。