重要度が高まるEC物流の「差別化」「業務フロー改善」「コスト圧縮」などにつながるAI活用とは【EC荷主と3PLの最新意識調査】
AI活用で期待できる効果
■ 競合との差別化 AIが適切に導入されれば、データ分析の自動化、パターンの特定、問題の解決、反復的なタスクの自動化にAIが重要な役割を果たし、さらには配送効率、精度、顧客体験、ROIがアップすることによって競合他社との差別化を図ることができる――。今回の調査では、このように荷主と3PLの見解が一致していることがわかっています。 AI技術を導入し、EC利用者の需要の高まりに応えるには、マネジメントの改善が重要であるという見方も一致しています。 調査結果では、「AIを人間の直感に代わるツールと見なしている」と回答したのはわずかに10%程度。「AIは大量のデータを基に一定のパターンを捉えて抽出するツールになりえます。また、それを利用するのはサプライチェーン組織全体の人々であるため、さまざまな影響がもたらされます」と報告書は説明しています。 調査報告書ではさらに、「AIはアルゴリズムと機械学習モデルを使用して、履歴データ、市場動向、天候、消費者行動、ソーシャルメディアの動向などの外部要因を分析し、より正確な需要予測を提供します。予測が改善されると、企業は在庫の最適化、リソースの管理、過剰在庫や在庫切れの改善、配送ニーズの正確な予測ができるようになります」と指摘しています。 ■ さまざまな領域での業務改善 調査結果では、いくつかの領域におけるAIの利点をまとめています。 □ 配送のルートとスケジューリング最適化 AIと機械学習は、過去の履歴、交通パターン、交通、天候、荷主や配達員の配送スキームの制約などの外部要因を分析し、配送のルートとスケジューリングを最適化できます。より効率的なルーティングによって、燃料の消費削減、さらには配送時間を短縮し、コストを削減することも可能です。AIは配送にかかるコストの予測にも役立つため、荷主や3PLが特定の配送ルートに対する最適な配送コストを把握するのに効果的です。 □ 受注管理の改善 AIを搭載したシステムは、在庫の増減をリアルタイムで追跡し、新たな在庫の確保が必要なタイミングを予測し、エンドユーザーが同じ商品を再注文するプロセスを自動化します。適切な量の製品を適切なタイミングで入手できるようにして、保管コストを削減しキャッシュフローを改善するのです。 ペンスキー・ロジスティクスのサプライチェーンテクノロジー担当副社長であるラム・パンナラ氏は「実際に、AIを搭載したモデルは在庫の状況をリアルタイムで把握し、最適な在庫環境を管理することができます」と説明します。 ┌────────── AI搭載モデルは、より最適な在庫管理を行うために、POSデータ、注文履歴、その他のソースからの情報を取り込むのです。バックオーダーや再注文のプロセスを自動化することで、手作業によるミスを減らし、処理の工程をスピードアップし、精度を向上させることもできます。(パンナラ氏) └────────── □ カスタマーサービスへの好影響 AIは予測を得意とし、常に稼働し続けるため、需要予測の向上、在庫レベルの最適化、リアルタイムの状況の可視化、配送状況の追跡を通じてサービスの改善につなげることができ、結果としてカスタマーサービスにポジティブな影響をもたらします。 □ サプライヤー管理 AIは、企業が事業運営に欠かせない主力製品、サプライヤー、調達先を特定するのに役立ちます。さらに、過去のデータや外部要因を分析し、市況の懸念、地政学的問題、自然災害が発生する可能性など、潜在的なリスクを予測することもできます。調査結果では次のようにまとめています。 ┌────────── サプライチェーンの経営者は現在、たとえば、最初に入荷する必要があるトマトを正確に特定することができます。必ずしも、古い商品を奥に置き、新しい商品から出庫する“先入れ後出し”の在庫管理になるとは限らないのです。冷蔵・冷凍商品を取り扱うコールドチェーンや、商品の時間管理が必要な業界では、ルートの最適化に大きな価値を置くかもしれません。 └──────────