「緑内障手術」を受ける前に知っておきたいポイント・注意点を眼科医が伝授
緑内障の手術とは?
編集部: 緑内障の手術は、どのようにしておこなうのですか? 庄司先生: 様々な術式があります。例えば当院でおこなっている「MIGS」という方法があります。日本語に訳すと低侵襲緑内障手術となり、その名の通り、体に負担が少ない緑内障手術です。 編集部: 体に負担が少ないというのはいいですね。 庄司先生: MIGSは点眼麻酔のみでおこなうことができ、手術の所要時間も5~10分程度で済みます。術後の視力低下期間も短縮され、重篤な合併症の頻度も従来と比べて少ないというメリットがあります。しかしその反面、従来の手術と比べて眼圧を下げる効果は低いというデメリットがあります。ただし、点眼薬を併用することで眼圧を目標値へ近づけることは可能です。 編集部: ほかには、どのような術式があるのですか? 庄司先生: 「線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」という術式もあります。眼圧が高い、もしくは眼圧は高くないが視野障害が進行する、ほかの治療では改善できないといった場合におこなわれます。線維柱帯切除術は幅広い種類の緑内障に有効とされていますが、術後の視力低下、白内障の進行、前房消失、悪性緑内障、濾過胞からの感染などの合併症リスクがあります。 編集部: ほかにもありますか? 庄司先生: 「インプラント手術(エクスプレス・プリザーフロ・アーメド・バルベルト)」は、ほかの治療法では期待した効果が得られない場合や、過去に目の手術をしたことがあるといった難症例に対して用いられる手術です。インプラント素材は、この10年間で続々と登場してきましたが、各デバイスによって特徴は異なります。緑内障の病型や進行具合を確認しながらデバイスを選択する必要があります。高度な技術と知識を必要とするため、手術が可能な施設は限られています。
緑内障手術の前に確認すべきことや注意点
編集部: 緑内障の手術を受けるにあたり、気をつけることはありますか? 庄司先生: まずは、合併症について確認しておきましょう。術式によっても異なりますが、手術には多少なりとも合併症のリスクが伴います。例えば、術後感染や駆逐性出血などは、発症する確率は低いものの、失明に至る重篤な合併症です。どのようなリスクがあるのか、事前に確認しておくようにしましょう。 編集部: 手術後の注意点もあれば教えてください。 庄司先生: 手術後は、出血や炎症などによって眼圧が上がることもあります。反対に、眼圧が下がりすぎる場合もあり、手術後は眼圧が変動しやすくなっています。そのため、眼圧が安定するまでは経過観察のために通院が必要になります。また、必要に応じてレーザー照射や眼内の処置をおこなうこともあるので、そうした可能性についても確認しておきましょう。 編集部: そのほか、気をつけることはありますか? 庄司先生: 術後、おこなってはいけないことがあります。例えば、術後早期は手術の傷口が完全には閉鎖されていないため、強い刺激を受けると傷口が開いて回復が遅れたり、感染リスクが高くなったりすることがあります。また、術後1週間は保護メガネを装用する、車やバイクの運転は医師の許可が出るまで控えるなど日常生活での注意点があるため、必ず術前に確認しましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 庄司先生: 緑内障の治療は、「手術して終わり」ではありません。その後も継続して定期的な通院が必要ですし、術後も点眼薬の調整が必要です。そのため、長期的な視点で医療機関を選ぶことが大切です。緑内障の専門医であることはもちろん、相談しやすさや通いやすさなども考慮して、医療機関を選択するようにしましょう。